心地よい香りと
ナイチンゲールの教え
インタビュー先の事業所とご担当者様
伊藤 きよみさん 管理者
東本町訪問看護ステーション
東京都東久留米市 / 西武池袋線「東久留米」駅 徒歩3分
若年世帯を中心に発展を遂げる東久留米! 駅前すぐの訪問看護ステーション!
よろしくお願いします。
私事ではあるのですが、僕は以前からよく西武池袋線を利用していまして、『東久留米』ってこんなに綺麗になっていたんですね!
駅ナカに『成城石井』なんか入っちゃって…。
『成城石井』が入ったのは今年からです(笑)。
このステーションを立ち上げて10年になるのですが、当時は昔ながらの古い駅でしたよ。
ここ数年で一気に整備されていきましたね!
それだけ東久留米エリアのニーズが高まっているのですかね?
立地的に若い世帯が住みやすいんだと思います。
駅前のマンションに住まわれる方や、戸建ても増えているようですし。
急行が止まらないとはいえ、都心からも決して遠くはないですし、地価相場もお手頃なのかもしれないですね!
生活をする環境として良さそうだな~。
行政での訪問指導とステーションでの訪問看護の両面から見た在宅の現場!
伊藤さんのご経歴について、教えて頂いてもよろしいですか?
はい。私は宮崎県の出身で、看護学校から東京に出てきました。
その後、大学病院に入職をして、外科系の混合病棟で9年間働きました。
とにかく忙しい病棟ではあったのですが、看護は面白いですし、とてもやり甲斐のある職場でしたね。
混合病棟でどのような患者さんが多かったのですか?
ガンの患者さんが多かったですね。
当時はまだ、ガン患者さんは苦痛のコントロールが苦慮した時代。
そうでないところもあったのでしょうが、私のいた部署は、「苦しい、苦しい」、「痛い、痛い」で亡くなる方が多く、見ていて辛いものがありました。
その時の経験が、現在の在宅看護・訪問看護に繋がっていったのですか?
そうですね。
看護師として、なんとか1人1人の患者さんに丁寧なケアができないかと悩んでいた中、「在宅看護・訪問看護」というキーワードが目に入りました。
ただ、私自身が在宅に関する情報を全く持ってなかったので、1~2年かけて自分に合う働き方の事業所を見つけようと、様々な職場を見てまわりました。
役所の健康指導課をまわっていた時に、積極的に訪問指導をやっている区に巡り合え、非常勤で訪問指導から始めることができました。それがすごくラッキーでしたね。
行政の訪問指導の仕組みとして、高齢福祉・障害福祉は色々な方と動きますし、訪問指導の中でも、PT・OT・栄養士と、様々な職種の方と一緒に働くことができ、「在宅って面白い!」と感じた瞬間でしたね。
その当時で、行政の中から在宅看護・他職種連携を学ぶことができたメリットは大きかったですね~。
そうですね。
まだまだ「訪問看護って何?」という時代だったので、地域の誰と連携を取ればよいのか、どのように在宅介入が進んでいくのか、情報を多く持てた点は本当に助かりました。
一方で、行政側ではなく、訪問看護ステーション側で研修に参加した時のショックも印象深かったです。
ほとんどの利用者さんが重心と難病の方という事業所だったのですが、大学病院で何年もやってきたのに、「利用者さんの家で何をしていいかわからない」「バックに医師も先輩もいない中、お家でなんて何ができるんだろう…」と不安になったことを覚えています。
行政の訪問指導と、ステーションでの訪問看護では、またギャップがあったでしょうね。
はい。どのようなスタイルで在宅看護に関わっていくのが自分に合っているのかを考えていくうえで、様々な職場を経験したことはすごく参考になりましたね。
その後、ご自身で訪問看護ステーションの立ち上げをしていくうえで、どのようなステーションにしていこうか、といったイメージはございましたか?
基本的には「どの年齢もどの疾患も看たい」という前提ではあったのですが、難病の方やALSの方は、訪問看護の始まりの時からずっと関わり続けていたので、その経験は活かしたいなと思いました。
ただ、ガン末期の方との関わりや疼痛管理については、時代毎に変わっていきますし、その都度勉強をしながら、という前提ですけどね。
伊藤さんのお話を伺っていて、ご自身でしっかりと考えられて、現場を自分の目でみながら、キャリアプランを考えていかれていますよね。
そのリサーチ力や行動力は凄いな~と思いました。
もう、これは性分なのかもしれないですね(笑)。
栄養状態も悪い90代の利用者の褥瘡にも効果を実証した、メディカルアロマ!
こちらのステーションでは、『メディカルアロマ』や『フットケア』にも積極的に取り組まれているとか?
はい。最初は私自身がストレス緩和のために「受けてみたい」と思ったことがキッカケなんです(笑)。
その時に受けたのがドイツ式のフットケア『ポドロジー』でした。
それがすごく気に入って「教えてください!」と頼んだら、特別にコースをつくってもらい、習うことになりました。
ここでもまた、持ち前の行動力を発揮されてすごい(笑)。
人の繋がりもあるんですよ。
メディカルアロマの方では、他のステーションの管理者をやっている、私の先輩ナースがおすすめしてくれたことをキッカケにセミナーを受けました。
そうなるともう「これは医療に使わない手はないな!」と思いますよね(笑)。
利用者さんの反応はどうですか?
メディカルアロマやフットケアは、1つの手段でしかないのですが、本当にケアそのものだなと感じてます。
とある、歩けずに自宅療養していた肺ガンの末期の方がいました。
ガンに関しては疼痛コントロールの必要性はまだなかったのですが、「足のケアから状態をみていきましょう」ということになって始めたところ、「こんなに良いケアを受けられるのなら何年も前から知り合いたかった」と満面の笑みを浮かべてらっしゃったんです。
ご家族もその反応を見て、すごく安心されていましたね。
それだけフットケアが心地よかった??
そうですね。
ただリラクゼーションのためだけではなく、皮膚や血流に対して大きな効果もありますし、タッチングケアも大きな意味があります。
心地よさを提供すること、皮膚の清潔を保つこと、換気に加えて、心地よい香りを入れること、これはナイチンゲールが100年以上前に言っていた看護そのものなんですね。
アロマは薬ではないので、薬事法上「治ります」とは言えないものの、充分な効果は実証されているといった感じでしょうか?
はい。
一度、研究事業で、ご家族と主治医の先生の同意のもと、大きなポケットのある90代男性を被験者として、アロマだけで褥瘡を治す試みをしました。
クレーという美容のパックで使える泥にアロマを混ぜ込んで、洗浄してポケットを埋めたところ、段々と褥瘡が治っていきました。
その後も状況を観察していったのですが、瘢痕形成作用や抗菌作用があること、治癒課程が何も問題なく回復していっていることもハッキリわかりました。
表皮剥離を待つばかりになった時に、やっと被覆材を使った程度です。
90代の栄養状態も万全ではない方でも治癒できたということで、人間の持っている治癒能力に感服しましたし、アロマの良い作用について、自信を持って言えるキッカケにもなる研究でしたね。
40歳前後のママさん看護師が活躍をする、様々な経験や学びのある職場!
東本町訪問看護ステーションの特徴を教えて頂けますか?
スタッフでいえば、40歳前後が多くほとんどが子育て中です。
同じ悩みを持つ同年代同士で協力しあえる環境だなと思います。
ママさん看護師が多いのですね。
利用者さんはどのような方が多いですか?
難病の方が多いですね。ALSだけでなく、神経難病の方などもいらっしゃいます。
あと決して多くはないのですが、常にターミナルの方もいます。
症例はバランス良く受けられていると思いますね。
各スタッフが色々な症例を経験できるように、意識しながら担当分けをしています。
それは働くスタッフとしても、様々な経験ができて良いですね!
その他にも、事業所のアピールポイントなどございますか?
まず、まとまった研修や人工呼吸器の取り扱いの勉強会など、外部研修はたくさん参加できるようにしています。学ぶことは多い環境だとは思います。
その他にも、メディカルアロマやフットケアに興味ある人には、資格を取るための補助があります。
うちのスタッフがアドバイザーの資格を取っているので、資格取得のサポートができますよ。
メディカルアロマやフットケア以外でのサポートも、その領域と予算にもよるのですが、訪問看護の本業に活かせるようであれば、検討をしていくつもりです。
「あなたは一体だれの味方なんですか?」 問われた利用者さんとの距離・関係
伊藤さんの印象深かった利用者さんとのエピソードをお伺いできますか?
あるALSの利用者さんですね。
介護保険のはじまった年から、訪問看護師・ケアマネ・所長として7年間関わらせて頂きました。
それは長いですね…(汗)。
はい。どんどん病状が変わっていく中で、訪問看護だけでなく、他のサービスのことなどでも一緒に動かなくてはいけない状況だったので、行政とのやり取りを中継ぎしたりもしていました。
行政での勤務経験のある伊藤さんに間に入ってもらえるのでしたら安心ですね。
いえ……。行政とのやり取りではかなり試されましたよ。
行政と利用者さんとの中立のような立場で入っていたので、
「あなたは一体誰の味方なんですか?」
「自分たちに対してどういう立場で何を支援してくれますか?」
と面と向かって利用者さんから問われたことがありました。
“中立”という立場では足りない、利用者さんに対する関わり方について、考える機会を頂きましたね。
訪問看護師にとって、利用者さんとの距離感の取り方は非常に難しい問題ですね…。
その後はどうなったのですか?
私がそちらのステーションを退職してしまったので、最期まで看ることはできませんでした。
退職のご挨拶にいった時に「これからどうやって生きていけば良いのかわからなくなっちゃう」と言って頂けたんですね。
自分がどれだけ深く関わってきたのか、そこまで言ってもらえる程の関係性を築けたのか、と思いましたね。
利用者さんひとりひとりに向き合っていくことの大切さを教えてもらえたと思っています。
地域に残り、地域で必要とされる訪問看護ステーションを、次の世代へ
本日お話をお伺いしていて、好奇心旺盛にご自身が学んだ様々なものを看護の現場に取り入れていったり、利用者さんと深く長く付き合っていったりと、伊藤さんにとって在宅看護・訪問看護は、天職のようにハマったのだなと感じました。
そうだと思います(笑)。
ちなみに、在宅からまた病院に戻ろうと思ったことはありましたか?
実はあります。
訪問看護で利用者さんの持つ力を発揮できるようなケアをすると、これほどご本人が変わっていくことができるのか、と体感をした時がありました。
その時、この経験を活かして臨床の場に戻れば、どれだけ面白いだろう…と迷った時期はありましたね。
なぜ戻らなかったのですか?
また夜勤をしなければいけないのかぁ…と思い、やめました(笑)。
(笑)。
では、これからも訪問看護の現場で働かれていく中で、東本町訪問看護ステーションは、どのような方向に向かっていくご予定ですか?
ここ数年間は特に、自分ひとりがひた走っていては駄目だと強く思っています。
世の中での訪問看護のあり方は変わってきていきますし、新しい組織の形も生まれてきているように感じます。
これからも地域で残っていく、継続して地域の方に利用して頂けるステーションとしてのあり方を考えながら、次の若い人に引き継いでいく使命があるなと思っています。
これまでの経験や実績の中で、これだけ根拠のあることをこれだけ丁寧にしていけば大丈夫、といった自信もありますので、それをどのように次の人に繋げていくかも考えていかないといけないですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
ありがとうございました。
取材を終えて
西武池袋線「東久留米」駅前から徒歩1分ほどの好立地に事業所を構える、東本町訪問看護ステーション。
市役所や訪問看護ステーションなど、様々な現場から、長年『在宅』の現場に関わってこられた伊藤さんが、積極的に取り入れているのが、メディカルアロマやフットケアです。
日本では薬事法の兼ね合いもあり、効果に関する案内の難しさはあるのですが、適切な知識を持つ方による適切な利用下におけるその効用は、確かなものだと感じられましたし、海外に目を向ければ、フランスでは処方箋でアロマが使える程とのことでした。
訪問看護における学びも非常に多い職場ですので、しっかりと在宅での経験を積んでいきたい方には、是非オススメしたい事業所です!
取材・文章:一和多義隆
事業所情報
事業所名 | 東本町訪問看護ステーション |
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運営会社 | 株式会社ケイ・ティ・アイ |
所在地 | 東京都東久留米市東本町5-1 |
最寄り駅 | 西武池袋線「東久留米」駅 徒歩3分 |
在籍人数 | 看護師10名(常勤5名・非常勤5名)、PT、OT |
従業員の平均年齢 | 40歳前後 |
本日は、西武池袋線「東久留米」のすぐ駅前に位置する、『東本町訪問看護ステーション』の管理者、伊藤きよみさんにインタビューをさせて頂きます。
よろしくお願い致します!