ICUからみ訪問看護世界

インタビュー先の事業所とご担当者様

貞弘 ひとみさん 代表・看護師

訪問看護ステーションきずな 小平サテライト

東京都小平市周辺

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意外(?)にも裕福な方の多い小平エリアでみかける元◯◯のご利用者

一和多

本日は、東京都西部、清瀬市と小平市の隣接する2つのエリアで2事業所を展開する『訪問看護ステーションきずな』で、小平サテライトでの管理者をされている貞弘さんからお話を伺います。 

 

よろしくお願いします!

 

 

 

貞弘さん

よろしくお願いします!

一和多

『小平』、場所的に清瀬市や西東京市とも重なるエリアだと思います。 

 

2ステーションを見ていて、それぞれの土地柄といいますか、エリアによって特徴があるな、と感じることはありますか? 

貞弘さん

ありますよ~! 

 

 

清瀬は、高齢化率が高く、また生活保護の方も多い印象です。 

 

一方、小平は、移住してきた若い世帯や、比較的裕福なご家庭も多いイメージで、なかには医療保険が現役並の3割負担のお家もあります。 

自身、(自己負担額が)現役並の方はじめてみた!」と驚きました笑)。 

一和多

そうなんですね!? 

 

そんな裕福な方が多いエリア!というイメージは特段持っていなかったです。 

貞弘さん

会社の役員ですとか…自衛隊が近いので元自衛官の方とか。

一和多

自衛隊! 

元自衛官の方からお話を伺うというのも色々と興味深いですね…!

子育てを疎かにさせない! 運営方針は子育て中のある実体験から

一和多

エリアについてお話を続けさせてください。

 

小平市は、近隣エリアと比べても訪問看護ステーションが多いという印象がありますがいかがですか? 

貞弘さん

そうなんです!

 

市の広さが違うので単純比較はできないですが、清瀬市が8事業所なのに対して小平市はステーションが22事業所あります。 

一和多

そんなに! 

貞弘さん

はい。

しかも、小平には色々なジャンルのステーションが集まっています

小児専門や精神専門、あとは病院付きだったり、リハビリが強かったり 

 

色々な特色あるステーションが集まったうえで22事業所もあるので、なかなか激戦区だと思いますよ 

一和多

それは、地域の皆さんにとってはすごく良いことですね!

経営する側にとっては…、プレッシャーにもなりそうです…(汗)。 

 

 

そんな競争の激しいエリアで、きずな・小平サテライトはどのような運営を目指していますか? 

貞弘さん

まずは小児に強いステーションを目指していきたいと思っています!

 

 

偶然ですが、リハビリで非常に優秀な人材が揃っていて、かつ小児のリハビリができるスタッフがいるんですよ~!

一和多

それは心強い! 

 

ただ、小児というと、小児領域の経験がないと苦手意識をもたれやすい領域かな、と思うのですが…

そのあたりのフォロー体制はどうされていますか 

貞弘さん

実は、私の義姉が都内、とある小児有名なステーション管理者をしているんです!

 

私も含めて、そこで小児の研修を受け小児看護について色々教えてもらっています。 

一和多

教育ステーションのあちら! 

すごいご縁をお持ちですね(笑)。 

 

 

小平は、小児訪問看護ニーズはいかがですか 

貞弘さん

ニーズは高いです 

ただ、受けられるステーションがまだまだ少ないが実情 

一和多

なるほど。

小児を受けられるステーションが少ないのは日本全体の課題ですね…(汗)。 

 

ちなみに、小児以外にも、末期の方、神経難病の方、精神疾患なども受け入れていらっしゃいますか 

貞弘さん

なんでも幅広くお伺いしていますよ

 

「ゆりかごから墓場まで」じゃないけど、(在宅で)なんでもできる人を目指す方には、いい環境だと思います。 

貞弘さん

色々な方を対象にしていますので、ご依頼を受けるにあたって「どのような介入をするか、誰がフォローするか、最終的にどうしたいか」いう点は特に丁寧に検討しています 

 

また、先程も話に出た、力のあるリハビリのメンバーもいますので、小児も難病でも、リハと看護を一緒にお受けするようにしていますよ 

一和多

こちらのスタッフさんは貞弘さんをはじめてとして、子育て経験をもつ方が多いですね。 

 

仕事と家庭との両立は、皆さんどのようにされているのでしょうか 

貞弘さん

子育て中スタッフは多いですね!

 

そもそも、会社の方針として、「子育てを疎かにしないでほしい」と考えているんです 

 

スタッフのなかには小学校と中学校で2つ同時にPTAの役員をしているいます。 

「今年は当たったね~」と(苦笑)。 

一和多

それはすごい!

PTAを2つ掛け持ちするのは、仕事をしていなくても大変そうです(苦笑) 

 

「子育てを大切にする」ことを会社の文化にしているのは、なにかきっかけなどがあったのでしょうか。

貞弘さん

私自身が3人子育てをしながら働いたのですが、やっぱり大変(笑)。 

そこがベースになっているのかもしれません。

 

以前働いていたステーションで、私の産休中にスタッフのご家族に不幸があり、私もすぐに仕事復帰しなければならない、という状況になったことがあったのですが、 、

子どもを保育園に預け、お昼休みは授乳に行って、すぐ仕事に戻って…という生活でした(汗)。 

一和多

それは…

誰のためのお昼休みかよくわからないですね…(汗)。 

貞弘さん

本当ですよね(笑)。 

 

子どもに対しても、そのときは「ごめんね」という気持ちが強かったんです。

だからスタッフには子どもを犠牲にするような働き方はしてほしくないと思っています。

貞弘さん

むしろ、今のスタッフの中には子どもを保育園に預けて働きたいです!」と言ってくれるもいるんですよ。

 

「子供自身は大丈夫?」

「もうちょっとゆっくりでいいんじゃない?」

と周囲が心配することもあるくらい(笑) 

一和多

たしかに、「子どもは大好きだけどずっと2人きりだと息が詰まってしまう」、「早く仕事復帰したい!」という話も聞きますね。

貞弘さん

そうです、そうです!

 

私も、子どもと24時間ぴったり一緒にいるのが辛いタイプだったので、気持ちはよくわかります。 

1でもいいから働かせてくれ!」と思っていましたから(苦笑) 

一和多

仕事が良い息抜きになるというケースですね。

貞弘さん

はい。

そういバランスのとり方もできる職場にしていきたいです。 

バリバリのICUナースが訪問看護で働き始めたキッカケは一歳児健診!?

一和多

ここからは貞弘さんのご経歴を伺いたいと思います!

 

まずご出身はどちらですか? 

貞弘さん

このあたりが地元で、看護学校も地元で卒業しました 

一和多

根っからの清瀬っ子なんですね! 

 

就職はどちらに? 

貞弘さん

看護学校が大学付属だったので、そのままそちらの病院です 

集中治療室に配属されて、そこで長く働きました 

 

手術室の真横のICUだったので、ひたすらオペ患が流れてくるようなところでした…(笑)。 

一和多

なるほど…。

 

話し方がチャキチャキしていらっしゃるので急性期出身の看護師さんだろうな~)内心思っていました(笑)。

貞弘さん

あはは! 

バリバリ急性期出身です(笑)! 

 

 

実は、病棟で働いたことがないんです。 

は横浜の病院に勤めたのですが、そこもICUとCCUの混合病棟、そのまま妊娠、出産しましたので。 

一和多

病棟を経験されたことがない!

 

そんなこともあるんですね!

 

 

訪問看護へはどのタイミングでいらっしゃったのですか?

貞弘さん

それが…、二人目の出産でお世話になった助産院へ、一歳児検診に連れて行ったときに「働かない?」って言われまして 

「いや、私助産師じゃないですし…」と言ったら、「違う違う。すぐそこにお友達の訪問看護ステーションがあるの」 

 

そんな流れで助産院の近くにあった訪問看護ステーションを紹介されたんです(笑) 

一和多

これまた不思議なご縁で…(笑)!

貞弘さん

そうなんです(笑) 

 

保育園に入れられるかな?

なんて心配もしながら、子育てに煮詰まって時期でもあったので、「週1なら」お答えして、そこから訪問看護の道に入りました 

 

 

そのあとは流れるように、半年経たずに常勤になっていましたね(笑)。 

一和多

(笑)。

夫婦お二人暮らし、精神疾患を持つがん末期のご利用者

一和多

貞弘さんが訪問看護で出会った、印象に残っている利用者さんのエピソードはありますか 

貞弘さん

割と最近のお話なのですが、よいですか?

一和多

もちろんです。

貞弘さん

もうすぐ還暦になる統合失調症の女性なですが、

いつも通っている精神科のクリニックである日強烈なにおいを発しているときがあったらしいんです。 

一和多

におい、ですか…? 

 

調子が悪くてお風呂に入れなくなっていた、とか? 

貞弘さん

そう考えるのが普通なんですが、どうも一か月前の受診の時も同じ匂いがしたぞ、という話になったそうなんです。 

 

そのときよりも匂いが強くなっていたので、クリニックの看護師が全身状態をみてみたら、乳がんで胸が崩れていて…。 

一和多

!!

 

ご自分では「おかしいな?」と気づかれなかった?

貞弘さん

そうですね…。

 

旦那さんとお二人暮らしだったのですが、旦那さんも気づける方ではなかったんですね。 

ご本人は「なんかおできができちゃった」という理解でいらして。 

貞弘さん

ご自分たちで乳がんの専門の先生受診されたのですが、もうクリニックでは手に負えない状態だったので、大きな病院に紹介されて…、

そこからうちにご依頼がありました。 

一和多

入院はされなかったのですね…。

貞弘さん

はい。

 

初めての大きな病院に入院する、ということに戸惑われたんでしょうね。 

「帰る帰る!」とかなり動転されたようで、いったんご自宅に戻っていただくしかなかったそうです。 

一和多

そこから訪問看護が開始になった??

貞弘さん

はい。

病院から、ひとまず洗浄してアズノールを塗布してほしい、とのことでお伺いしたのですが… 

 

ご自宅はかなり散らかってい、乳がんも花が咲いてしまったようでベッドは血だらけでした。 

一和多

壮絶ですね… 

貞弘さん

はい…。

 

ご主人も状況を把握することは難しいようでした。 

貞弘さん

でもとにかく洗浄しないと日に日に悪くなることは目に見えていましたので、訪問しながら、統合失調症と末期の乳がんをあわせて診てもらえるところへの転院もサポートしました。 

 

ようやく転院先を見つけられて、軟膏も匂いを抑えられるものを処方してもらって、状態は徐々に落ち着いていきました。 

一和多

きずなさんの居宅介護支援事業所のケアマネージャーさんも一緒に動かれていたのですか? 

貞弘さん

はい。

チーム一丸となって、包括的にアプローチしていきました。

貞弘さん

そのあと、3週間に1回の抗がん剤打てるようになるまで漕ぎつけました。

 

ちょっと一息ついたな、と思える頃でしたね。

貞弘さん

ある日、私がお伺いすると、いつもはドアを開けてくださる旦那さんが出ていらっしゃらなかったんです。 

一和多

外出されていた、というわけではなく…? 

貞弘さん

それが… 

 

それまでも、奥さんを置いてぶらりと遠方に出かけられることがある方だったのですが

そういうときは必ず、看護師に「この日はいないけど、何時までに帰ってきます」とおっしゃっていたんです。 

貞弘さん

なので、ご本人に、「お父さん今日どうしたの?」と伺ったら、

2日ぐらい前から見てない!」「2寝てる」とおっしゃいまして。 

一和多

2日前から、2階で…??

貞弘さん

はい。

 

それまでは2階はプライベートなところだから見ないで言われていたので、私は1階しか知りませんでした 

ただ、「これはさすがにおかしいな」と思って、

「本当に申し訳ないんだけど、ちょっとお父さんに会いに行っちゃ駄目かな?」とご本人に聞い「一緒に行こう」とおっしゃったので一緒に階段あがりました。 

 

 

ドアを開けたそこには冷たくなった旦那さんが横たわっていたんですね 

一和多

えっ…!? 

 

なにあったのでしょうか…? 

貞弘さん

司法解剖の結果、階段からの転落が原因だったそうです…。 

 

 

病死ではなく事故死だったので、警察の介入もあって事後処理は色々と大変でした 

一和多

介護者がいなくなってしまい、ご本人はどうなったのですか? 

貞弘さん

実は、まだ幼いころに、その方のご両親に預けられお子さんがいらっしゃったんですね。 

奥さまの持病もあり、ご夫婦で育児をすることは難しかったようで…。 

 

そのお子さんが色々と動いてくださって、転院先もようやく見つかって、今はホスピスで過ごされています。

一和多

精神疾患と身体疾患と、どちらもある方の受け入れ先を見つけるのは大変だったでしょうね。 

貞弘さん

本当そうなんです。 

 

難しいケースも受け入れてくれるホスピスを、ケアマネが懸命に探しました。

一和多

旦那さんが階段から落ちてしまった2日間ほどは、ご本人への訪問もなかったんですね。 

 

もし旦那さんにも支援の手があったら、なにか違ったかもしれないですね…。 

貞弘さん

はい。 

ちょうど土日でもあって、その土曜日旦那さんは出かけていらっしゃったんです。

 

帰ってきたあとの事故ったようですね。 

一和多

ご自宅で過ごされる方は、24時間ずっと医療スタッフが看ているということはできませんから…

 

もどかしいところですね…。 

貞弘さん

はい…。 

 

もっと早くにこのご夫婦を地域が見つけられなかったのかな、という思いは沸きました。 

近所との関わりとか、周囲との関わりとか、あとは時期的にもっと早く、ですとか…。

 

医療機関で目をかけられることがあったら…とか 

一和多

突発的な事故が重なったとはいえ、すごく難しいケースですね。 

 

それはどうしようもなかったのでしょうね……。 

急性期出身ナースが感じた、訪問看護の魅力と下地づくりのススメ

一和多

ICU出身の貞弘さんが、その真逆ともいえる在宅にてみて、病院と在宅の違いという意味で感じたことはありますか? 

貞弘さん

病院はわざわざ治してください」と来院した患者さんなので、治療の話は比較的スムーズです。

在宅は「私が手伝わせていただいてよろしいですか?」という思いで入らないと家に入ることもできない!

というところが大きな違いでしょうか。 

一和多

関係性をこちら側から作っていく必要があるわけですね。

貞弘さん

はい。

追い返されることもよくあります(笑) 

 

 

実習の学生さんには、「仲良くならないと看護ができないよ」よく話しています。 

その方の考え方が自分とは違うかもしれない、「本当にいいの?」と思うこともあるかもしれないけどその人はその人の想いがあって、その方のおなんだから、と。

一和多

まずはその方に寄り添うところから始まる、ということですね。 

貞弘さん

そう。喧嘩するために家にいれる人はいないわけですよ(笑) 

 

たしかに利用者さんやその家族に対する教育が必要な場面もありますが、嫌われて拒否されたら関係性が終わってしまいます。 

だからこそ、「小難しいことは取っ払って、まず仲良くなろういうことを意識ています。 

一和多

医療的に厳しい管理が必要なICU出身貞弘さんがおっしゃるというところが、また興味深いです 

貞弘さん

ICU時代に、意識のない本人へ家族が面会にいらっしゃるという場面がありました。

その方々寄り添うことって難しいな、と常々感じていたんです。 

 

その当時できなかったことを今の在宅でできているのかな? と、個人的には思っています 

一和多

なるほど。

 

キャリアとして、「ICUの経験で、ここは在宅で特に活きた!」という部分はありましたか? 

貞弘さん

~~~ん。 

 

ICUに限らずどんな病棟でも、しっかり基礎を勉強しておけば、その上に在宅で必要な知識や経験が積み重なっていくと思います 

貞弘さん

私の手帳には今でも勉強しなきゃいけない疾患3つぐらい書いてって、そのぐらい在宅で新しく勉強することどんどん出てきます 

それこそ難病の方は、自分の疾患や新しい治療法のことなど、本当によく勉強されていますし。

 

だからどんな領域の経験でもいいので、しっかりと下地つくっていくという意識で良いかな? 

貞弘さん

病院時代に、あえて意識的に見てもらいたいと思うのは、患者さんが病院で過ごすということはどういうことなのか、ということですね。

 

そこから感じるなにかを持って在宅にきてもらいたいです。

一和多

本日はありがとうございました! 

貞弘さん

こちらこそ、ありがとうございました! 

取材を終えて

一和多

西武新宿線「花小金井」駅と「小平」駅のちょうど中間ほどの場所に事業所を構える『訪問看護ステーションきずな小平サテライト』。

 

 西武池袋線の「清瀬」駅に本店を持ち、サテライト店の立ち上がりからまだ年数も浅いこともあり、現在は在宅経験者を中心とした少人数での運営となっているのですが、訪問内容をみると終末期・難病・小児・精神etcと、「これぞ訪問看護!」と言えるような幅広い症例の受け入れをされております。 加えて、様々な症例を受け入れていくために、本店とも連携をしつつ、教育カリキュラムの整備や外部研修の利用にも力を入れられているそう。

 

ここまでの情報だと「忙しそう…」「家庭との両立が難しそう…」と二の足を踏んでしまいそうですが、管理者の貞弘さん自身も3人の子育てをしながら訪問看護師として働かれてきた方ですので、ワークライフバランスへの配慮についてもご安心ください!  訪問看護での様々な現場を経験してこられた管理者さんですので、まずは気軽にお話だけでも伺ってみてはいかがでしょう? 

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 訪問看護ステーションきずな 小平サテライト
運営会社 株式会社Schilf
所在地 東京都小平市鈴木町2-246-1F
最寄り駅 西武新宿線「花小金井」駅(徒歩16分)
在籍人数 看護師4名、理学療法士2名、作業療法士1名
従業員の平均年齢 30代後半 ※30~40代スタッフが在籍
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