家の真ん中には
おばあちゃん

インタビュー先の事業所とご担当者様

廣田 仁美さん 在宅介護事業部 部長

キヨタナースステーションみなと

東京都港区 / 山手線「田町」駅 徒歩12分

事業所は港区の自社ビル内! 超老舗企業を親会社に持つ訪問看護ステーション!

一和多

今回は、港区内のオフィスビルに事業所を構える、『キヨタナースステーションみなと』の在宅介護事業部で部長をされている廣田さんへのインタビューです。

 

よろしくお願い致します。

廣田さん

よろしくお願いします!

一和多

すごい場所に事業所を構えていますね!

 

オフィスビル、しかも自社の持ちビル内に事業所を構える訪問看護ステーションは滅多にないかと思います…(汗)

廣田さん

私達の親会社が不動産業も営んでいて、所有するビルの一角を間借りしているだけなんですけどね。

 

普通に家賃も払っていますし(笑)。

一和多

親会社が明治28年(1895年)設立の老舗企業って時点で、他にはないユニークな訪問看護ステーションだと思いますよ!

 

歴史ある会社のグループ企業ならではのメリットってございますか?

廣田さん

そうですね~。

 

株式会社の運営する訪問看護ステーションなので、利益をしっかりと出していくことは重要ではあるのですが、だからといって、

 

「どうも経営が危ないらしい…」

「給与が支払われるか心配…」

 

といった「お金」に関わる心配をしなくて良いという安心感はありますね。

一和多

大きな病院しか経験の無い看護師さんですと、そういった資金面でのシビアさを肌で感じる機会は少ないですよね。

 

訪問看護ステーションでは、医療法人、株式会社、社会福祉法人など、中には非営利でのNPOが運営する組織もあるので、経営状況も事業所次第で本当に様々なので…。

廣田さん

私も様々な組織の訪問看護ステーションを見るなかで、経営面での安定感って大切だなと思うようになりましたね…。

 

ただ、色々と見てきた中で、株式会社運営の事業所が自分には一番合っていると思ったので、いまの会社で働いていますね。

一和多

どのような点が?

廣田さん

やはり、1件の訪問の重みが感じやすいんですよね。

 

自分たちの訪問1件で、利用者さんからいくらのお金を頂いているとか、どれだけの時間をかけてどれだけの売上になっているとかって、看護の質を高めていくことや、効率的な働き方をするために必要な意識だと思っています。

 

株式会社ですと、そういった数字面の共有や目標設定がクリアだと感じています。

一和多

よくわかります!

 

医療職の方は、お金のことに抵抗感を感じる方も多いと思うのですが、自分自身の働き方を見直す意味でも、すごく大切な意識ですよね。

社長も経営とケアマネを兼任! どこまでも現場主義な経営・管理スタイル!

一和多

廣田さんの役職は『在宅介護事業部 部長』となっておりますが、訪問看護以外も見られているのですか?

廣田さん

はい。

 

弊社は、施設介護事業部と在宅介護事業部の2つの事業部があるのですが、私はその中での在宅介護事業部内での、看護・介護・居宅介護支援を担当しています。

 

訪問看護ステーションには、私とは別に管理者がいて、現場スタッフの教育やフォローは、私と管理者の2人体制でおこなっていますね。

一和多

小規模な事業所が大半となる訪問看護の業界では、どうしてもマネジメントが弱くなりがちなので、廣田さんのような現場経験を積まれた方を、中間管理職として配置している組織は少ないと思います。

廣田さん

ありがとうございます。

 

ただ、うちも今のような体制になったのは、割と最近なんですよ。

 

それまでは、経営側と現場側とのギャップが埋まらない、という悩みを持っていました。

廣田さん

実は、当社の社長は経営のかたわら、いまでもケアマネ業務を兼務しているんです。

 

ただ、現場も見ながらの経営・管理では、手が足りないこともあり、そこをサポートするために、私が今のポジションに就いた、という経緯があります。

一和多

この規模感の組織で、社長が現場にも出ているというのも珍しいことだと思います…(汗)。

 

それだけ現場を大切にしているということなのですね?

廣田さん

そうですね。

 

社長ともよく話しているのですが、どのような経営判断をするにしても、やはり現場を見ていないと説得力がないんですよね。

 

私自身も、いまだに看護や介護の訪問の現場に出るようにしていますし。

一和多

しっかりと現場感を持たれている方々が、経営・管理されている組織であればこそ、現場で働く人も安心して目の前の仕事に集中できるのでしょうね!

在宅看護での多様なニーズに応えるために地域資源を繋げていく力を養う

一和多

こちらでは、どのような利用者さんを受けられているのですか?

廣田さん

0歳から100歳まで、介護状態としても予防的に関わらせて頂いている方から、終末期の方まで幅広く受けていて、いまは重症度の高い方は少なめですね。

 

あと、うちはリハビリもいるので、比較的、回復期・慢性期の方が多いです。

一和多

生活ベースが安定している方が多そうな印象ですね!

 

このような利用者さんを積極的に取っていこう! という意識はあまり無い感じですか?

廣田さん

そうですね。来るもの拒まずって感じです。

 

私の考えでは、在宅ではスペシャリストになることよりも、ジェネラリストになることの方が大切で、スタッフには、どのようなニーズにも応えられるような人材に成長をしていってもらいたいなと考えています。

 

また、事業所としても幅広いニーズに応えられる組織づくりが大切。

廣田さん

一方で、様々なニーズを抱えた利用者さんを看ていくうえでは、1つのステーションが全てを担うのではなく、「地域」がしっかりと連携していくことが大事だと思います。

 

外部の様々な事業所や、地域のドクター、ケアマネ、退院支援室の方など、「地域」がしっかりと繋がっていて、必要な連携が取れていることが、利用者さんにとって重要なことなんじゃないかなと。

 

どこか1つの組織だけが一人勝ちすれば良い、ということはないですね。

緩和ケア病棟で感じた病院の限界と患者の希望

一和多

廣田さんのこれまでのご経歴を教えて頂けますか?

廣田さん

看護学校を卒業後、杉並区にある中規模の総合病院で、内科や分娩室の配属となりました。

 

その後、看護学生の時から、緩和ケア・ターミナルケアに興味を持っていたこともあり、緩和ケア病棟が立ち上がった際、看護部長に一生懸命お願いをして、そちらに異動をさせてもらいました。

 

まだ、3年目だったので、病棟内でも一番下の若手でしたね。

一和多

緩和ケアやターミナルケアの、どのような点に興味を?

廣田さん

実習で受け持った患者さんが、がん末期で痛みを我慢して耐えている姿が印象的だったんですよね…。

 

人としての尊厳まで失っているように感じてしまい、患者さんに辛いことを強いるのは嫌だな、と感じました。

 

緩和ケアには、そのような苦痛からの解放、といったイメージを抱いたんですね。

一和多

なるほど…。

 

実際に緩和ケア病棟の立ち上げから参画をされて、緩和ケアの現場はいかがでしたか?

廣田さん

すごく楽しかったですよ!

 

スタッフみんなで勉強をしながら、「良い環境を整えよう!」と頑張っていました。

廣田さん

ただ、どれだけ自分たちが頑張っても、患者さんから「家に帰りたい」と言われてしまうことがとてもショックで…。

 

それからは、外出への同行や、外泊される方に付いていく中で、病院での顔と普段の顔が何でこうも違うのだろう? と思うようになりました。

一和多

どれだけ環境を整えても、やはり病院には限界があった?

廣田さん

そうですね。

 

やはり、その人らしさが出せる環境って、それまで生活をされてきた場所であり、家族に囲まれた空間なのだと思いましたね。

 

また、「家族に迷惑をかけたくないから」と仕方なく病院に入られる方が多いのだと。

 

その後、病院から訪問看護に転職をして、以来20年間、ドップリ在宅に浸りきって現在に至る、という感じです(笑)。

みんなで支えてみんなが繋がる。家の真ん中におばあちゃんがいるお家

一和多

廣田さんは、これまでたくさんの利用者さんを看てこられたと思うのですが、その中でも印象的だった方のエピソードを教えて頂けますか?

廣田さん

私にとって「在宅」の原点となったご家庭があります。

廣田さん

脳梗塞のおばあちゃんが利用者さんだったのですが、その環境が少し特殊でした。

 

三世帯で暮らされていたのですが、ご主人はすでに亡くなられていて、お嬢さんとその弟さん、2人のお孫さんと暮らされていたんですね。

 

あと、お嬢さんのご主人もすでにガンで亡くなられていたのですが、ご自宅の隣にはそのご主人の実家があって、義理のご家族とも親密な関係を持たれているお家でした。

一和多

ホームドラマのような、登場人物の多いご家庭ですね…(汗)。

廣田さん

そう、まさにそんな感じ(笑)。

 

もともと人が集まりやく、常に色々な人がワチャワチャ来ているようなお家で、

「飲み会の後にそのまま連れてきました!」

と、ご家族でもない方もよく出入りしていて。

廣田さん

そのお家は、おばあちゃんを家のど真ん中に置いていたんですね。

 

脳梗塞で食事も摂れない状態だったので、誤嚥リスクはあるし、吸引もする、オムツ交換も必要、認知症も併発って感じのおばあちゃんを、文字通りみ~~~んなで看ていたんです。

一和多

それだけ人の出入りが激しいお家の真ん中に、そのような状態のおばあさんがいるってすごいですね…(汗)。

廣田さん

そうですよね。

家での飲み会もよくしていたので、お嬢さんが油ものの料理をしている時は、

「おばあちゃんの痰がからんでるから、誰か吸引してあげて~」

と、そのとき家にいる誰かがお世話をしてあげていましたね。

 

ちょっと買い物に出かける時は、近所のお友達がおばあちゃんを見たり(笑)。

廣田さん

ご家族やご友人、ご近所さんまで含めて「みんなでおばあちゃんを看る」ことが当たり前になっているお家でした。

一和多

おばあさんも、住み慣れた環境の中でたくさんの方と接することができて、楽しかったでしょうね。

廣田さん

そうだと思います。

 

お庭でみんなが餅つきをしているのを、おばあちゃんが眺めていたりして(笑)。

 

とても可愛らしい方でしたよ。

廣田さん

実は、お孫さんと私が同年代で、訪問が終わった後も交流が続いていたのですが、お互いの子ども同士もまた同年代ということもあって、子ども達まで交流をしているんです。

一和多

お孫さんからさらに次の世代まで、繋がりが続いていったんですね!

廣田さん

これもすごい話ですよね(笑)。

 

最近、その時のお嬢さんが亡くなられたのですが、うちの子どもがお通夜に参列したんですね。

 

本人は全然覚えていないと思うのですが、小さい時に可愛がってもらった記憶があったみたいで、

「あそこのおばあさんにはお世話になったから」

と言うんです。

廣田さん

あの家が醸し出す、独特の空気だと思うんですよね。

 

生きることも死ぬことも、みんなで喜んで、みんなで悲しんで、そこにたくさんの人達が自然と集まっていって…。

 

私が「在宅って良いな」と思える原点をもらえたご家庭でしたね。

訪問看護は(未来の)自分のためにやる仕事

廣田さん

実は、私が訪問看護をはじめたとき、初勤務の二日前に実の祖母を交通事故で亡くしているんです。

 

急なことだったので、お通夜をして告別式をして、その翌日から訪問看護がスタートって感じでした。

廣田さん

祖母のことが大好きだったので、ご自宅で過ごされる同じくらいの年代の利用者さんを看ることが、本当に辛くて辛くて…。

 

ただ、1年間ほど働き続けた後、祖母のことがあったお陰で、おばあちゃんやおじいちゃんを大切に想うご家族の気持ちを、少しは理解できるようになったのかな? と考えられるようになっていったんですね。

 

あの当時抱いた自分の想いや感覚は、忘れないようにしよう、と常々思っています。

一和多

他の管理者さんも仰っていたことなのですが、訪問看護ってその方の積み重ねてきた様々な人生経験が、そのまま看護へと繋がっていく仕事ですよね。

廣田さん

そうですね。 ただ、その逆もあると思いますよ。

 

私は、この仕事は(未来の)自分のためにやってもらいたいと思っています。

廣田さん

訪問看護で様々なご家庭を看ていると、自分が将来、家族をつくり、子どもを育て、親の面倒をみて…、と進んでいった未来の自分をイメージするようになるんですね。

 

利用者さんのためだけではなく、自分の人生にとっても絶対にプラスになる仕事だと思いますよ。

一和多

本日はありがとうございました。

取材を終えて

一和多

JR「田町」駅のオフィス街を抜けた先のオフィスビル(まさかここに訪問看護ステーションが?といった感じです)に事業所を構える、キヨタナースステーションみなと。

 

オフィスビルなだけあって、同建物内にはスーツに身を包んだビジネスマンがたくさんいたり、ビル内には社食が用意をされていたりと、他の訪問看護ステーションにはないユニークな特徴がいくつもあります。

 

ただ、株式会社としての「ビジネス」としての訪問看護と、様々な訪問看護ステーションを経験されてきた廣田さんが目指す「地域」をつなげる訪問看護とが、バランス良く融合しているのがこちらの最大の特徴かと感じました。

 

日本有数の繁華街をいくつも抱える港区で、訪問看護をするのも楽しいと思いますよ!

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 キヨタナースステーションみなと
運営会社 キヨタ・ライフケアサービス株式会社
所在地 東京都港区芝浦4-3-4 田町きよたビル3階
最寄り駅 山手線「田町」駅 徒歩12分、都営浅草線「泉岳寺」徒歩15分
在籍人数 看護師:8名(常勤:5名 非常勤:3名)療法士:7名(常勤PT:3名、OT:1名、非常勤PT:3名)
従業員の平均年齢 30代半ば

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