母と娘の訪問看護奮闘記

インタビュー先の事業所とご担当者様

荻原 美智恵さん 所長

自由が丘訪問看護ステーション

東京都・目黒区 / 東急東横線「自由が丘」駅 徒歩10分

目黒区で最も歴史のある訪問看護ステーションの周りは、美味しいものがたくさん!?

一和多

本日はオシャレな雑貨屋や美味しいスイーツ屋さんが立ち並ぶ、女性に大人気のエリア、目黒区『自由が丘』で訪問看護ステーションの管理者をされている荻原(おぎはら)さんに取材をさせて頂きます。

よろしくお願い致します。

荻原さん

よろしくお願いします!

一和多

あの~~~、すごく基本的な質問からなのですが、こちらの事業所名は『自由が丘訪問看護ステーション』で間違いないですか???

入口に『自由が丘老人訪問看護ステーション』という看板があったので……(汗)。

荻原さん

いまは『自由が丘訪問看護ステーション』で間違いないです(笑)。

 

うちの訪問看護ステーションは平成4年から運営をしていて、当時は『自由が丘老人訪問看護ステーション』という名前でした。

 

ちなみに、うちは目黒区では最も古い訪問看護ステーションで、日本全国でも10番以内に入る、とても歴史あるステーションなんですよ!

一和多

平成4年……!

老人保健法が施行されて訪問看護ステーションが誕生した、まさにその年にスタートしたステーションなんですね!!!

荻原さん

私はステーションの立ち上げからいるわけではなく、介護保険が始まった平成12年に入職しているのですけどね~。

一和多

それでも、自由が丘で訪問看護のキャリア17年目(※2017年4月時点)ってことですね(汗)。

 

ちなみに、「自由が丘」に事業所を構えていると、女性にとっては楽しいスポットがたくさんあるように思うのですが、その辺はいかがでしょう?

荻原さん

そうなんですよ!!!

美味しいスイーツのお店がたくさんあるんです(笑)。

『自由が丘ロール』もあるし『モンサンクレール』もある!

 

あと、うちのスタッフはみんな飲み会が大好きなので、よく飲みにいきますね!

一和多

(笑)。

いきつけのお店とかあるんですか??

荻原さん

自由が丘駅前の『七味亭』とか、フカヒレで有名な『蔭山樓』とか(笑)。

一和多

有名な人気店ばかりじゃないですか(笑)。

出産・育児で7年のブランク! はじめての訪問看護はまさかの大混乱状態!?

一和多

荻原さんのご経歴についてお伺いをしていきたいのですが、どのようなキャリアからこちらの訪問看護ステーションに入られたのですか?

荻原さん

私は元々、大学病院の整形病棟で5年、皮膚科で5年働いていました。

それから3人の出産・育児があって7年間のブランクをはさんでいます。

 

ブランク明けで就職先を探すとき、病院へ戻ることになんとなく抵抗感があったんですね。

そんな時、新聞広告でこちらの訪問看護ステーションの求人を見つけて興味を持ったという経緯です。

一和多

ブランク明けで、よく訪問看護をやってみようと思いましたね?

荻原さん

不思議と、そこまで不安は無かったんですよね。

 

私の時代は、看護学校で在宅看護論はないし、訪問看護の実習も無かったので、よくわからないまま入職しました(笑)。

一和多

なるほど(笑)。

実際に訪問看護をされてみていかがでしたか?

荻原さん

いやぁ…大変でした………。

 

自分は元々、整形外科や皮膚科しか経験が無かったので、例えば「難病の利用者さんを看る」といっても、経験も無いしわからないんですよね。

 

自分で勉強したり、勉強会に参加したりして、「とにかく何とかしなきゃ!」ってなっていました。

一和多

事業所内で、管理者や先輩に相談をしたりはされなかったのですか???

荻原さん

それが、私が入職して半年くらいで、その時の所長さんも他のメンバーもみんな退職しちゃったんですよね。

それから、ほぼ未経験者の私が所長をやることになっちゃって(笑)。

一和多

なかなかの修羅場を経験されてますね(笑)。

荻原さん

そうなの(笑)。

 

その当時は一年ごとに所長が変わっているような状況が続いていて、外からは安定しない訪問看護ステーションだと思われていたと思います。

全然、近隣から新規利用者さんの依頼が来なかったですし。

 

それからは少しずつやっていくしかないなと、コツコツと地道に地域の信頼を勝ち取っていって、今にいたるという感じですね。

意識しているのは「スタッフが長続きする」事業所運営! その秘訣とは?

一和多

荻原さんが訪問看護ステーションを運営するうえで意識されていることはありますか?

荻原さん

まずは「スタッフが辞めない」ってことですかね~。

スタッフが働きやすく、長く働ける環境作りは特に意識しています。

一和多

実際、スタッフの定着率は高い?

荻原さん

高いですね~~~!

 

現在は8年以上勤続している方がすごく多くって、非常勤でも8年くらい働いてくれている方がいます。

 

他にも、看護学校を卒業して看護師歴3年で主婦になった方がいるのですが、その方は20年近いブランクがあってからうちに入職されました。

本当にもう新人のように一からの教育だったのですがしっかりと定着して、この方も長く働いてもらっています。

一和多

20年のブランクって凄いですね(汗)。

 

なにかスタッフが定着する・働きやすくなるような仕組みを取り入れていますか???

荻原さん

まず、安心して訪問ができるような、教育やサポートの体制はしっかりしていると思います。

 

外部の研修も「ドンドン参加して!」と言ってますし(笑)。

 

あと、利用者さんを受け持ち制でやっていることですよね~。

一和多

ある程度の規模感のあるステーションですと、チーム制でされているところが多い印象ですが、あえての受け持ち制?

荻原さん

そう。

もちろんチーム制のメリットはあるのですが、受け持ち制でしか感じられない「やり甲斐」や「充実感」ってあると思っています。

 

担当として利用者さんから本当に信頼されているからこそできる密な関わり方って、看護師にとって凄くやり甲斐を感じるポイントなんですよね。

 

ただ、「看護の目」は複数の視点を入れた方が良いことも事実なので、そこは適宜他のスタッフが入るようなフォローも心がけています

親子二代で訪問看護師! 病院勤務で燃え尽きていた娘を訪問看護に誘った理由

一和多

なんでも、荻原さんのお嬢さんも訪問看護師としてこちらで一緒に働かれているとか?

荻原さん

そうなんですよ!

常勤で働いています(笑)。

一和多

親子で同じ訪問看護ステーションで働いているって、なかなか聞かないですね~。

どんな経緯で一緒に働かれることになったのですか???

荻原さん

娘はもともと北海道の病院で働いていたのですが、そこがどうも亡くなる方がすごく多い病棟だったみたいで……(汗)。

 

一時期、「燃え尽き症候群」みたいになってしまい、看護師を続けられなくなったんですよ。

 

それからは、しばらく『TSUTAYA』と『マクドナルド』のアルバイトをしていましたね。

3年くらいかな。

一和多

全く看護に関係のない仕事をされたのですね~。

荻原さん

そうなのよ(笑)。

 

どんな形でも良いから看護師として働いてないと色々と忘れちゃうじゃない?

それで、「土日だけ」という形で、うちでアルバイトをしないか娘に持ちかけたのがキッカケ。

 

だから、最初は『TSUTAYA』と『マクドナルド』と『訪問看護』の掛け持ちからスタートでした(笑)。

一和多

お嬢さんもよく看護師として復職しようとなりましたね?

しかも経験のない訪問看護で…(汗)。

荻原さん

やはり看護師に戻ることへの抵抗感はあったようですよ。

ただ、少しずつ現場に出るようになって、「やっぱり看護が好きだ」ってなっていきましたね。

 

今では他のアルバイトの掛け持ちは辞めて、うちで常勤として働いています!

一和多

訪問看護が合っていたんですね~!

荻原さん

そうだったのだと思います!

この間は、自分でALSの利用者さんのために勉強会に参加したりしてて、感動して帰ってきてましたよ(笑)

91歳の母の死を受け入れられなかった息子さん。最期に伝えた言葉とは…。

一和多

これまで看てきた中で、印象深かった利用者さんとのエピソードを教えて頂けますか?

荻原さん

結構最近の話なのですが、すごくお母さんが好きな息子さんのご家族ですかね。

 

利用者さんはそのお母さんで91歳の方でした。

そのご家族のお父さんもうちでお看取りをしていたので、その繋がりで息子さんから「入って欲しい」と依頼を頂きました。

 

息子さんは、とにかくお母さんが大切で、「絶対に死んだら嫌だ」って感じでした。

ただ、私が入った時はすでに、どうみても老衰で…。

一和多

どうにもならない感じだった?

荻原さん

そうなのよ……(汗)。

 

ただ、息子さんは「お母さんはまだ生きる」と言って聞かないですし、ご本人も意識はしっかりしていて「生きよう」という意思を感じられたので、色々な医療資源を導入していったんですね。

 

パーキンソンの疑いもあったので難病の指定を取って、床ずれが生じたら皮膚科の先生にお願いをして、食事が喉を通らなくなったら言語聴覚士(以降、ST)さんにお願いして…。

一和多

わからないのですが、老衰の方にどこまで医療資源を使うかの判断って、やはり難しいものですか?

荻原さん

そうですねぇ…。

先生からも「STまで導入するんですか?」と言われました。

 

ただ、

「本人もご家族も、〈ご飯を食べたい〉〈食べさせたい〉と言っていて、それを助けることの何が悪いんですか? 本人の希望に沿って改善をしていくのは医療従事者として当たり前なんじゃないですか?」

と私も先生に意見して。

荻原さん

そんな期間が二ヶ月ほど続いてから、いよいよ容態が悪くなって入院になったんですね。

 

本人は「家に帰りたい」と言うのですが、息子さんはその時もまだ、お母さんの老衰を受け入れられなかったので、退院に難色を示すんですよ。

 

私から、

「お母さんは家に帰りたがっているし、病院では、1日に4回、吸引の処置があるんですよね? お母さんは吸引嫌いですよね? もう家に帰って、必要に応じた吸引の頻度で、お世話するので良いのではないですか?」

と説得をしてやっと折れたんですね。

 

それからお家に帰られて、10日ほどでお亡くなりになりました。

一和多

最後は息子さんも、お母さんの死を受け入れられたのですかね?

荻原さん

家に帰ってからも、なかなか受け入れることはできなかったですね…。

 

ただ、もうご飯も食べられなくなって、苦しそうにしている姿をみて、「もう無理なんだな…」と感じ取ったようです。

 

「お母さんもう良いよ。 お父さんのところにいってもいいよ。」

と言われて、その日の昼にお亡くなりになりましたね。

一和多

ご家族もそうですが、ご本人もやりきったという感じだったのでしょうね。

荻原さん

そうだと思います。

ご家族とエンゼルケアをしたのですが、その時のお顔が本当に優しくて良いお顔でしたね。

 

息子さんもすごく喜んでいて、「ありがとう」と言ってくださって。

 

その言葉を聞いて、「これが私たちの仕事だな」と強く思いました。

忙しい病院で働いていると忘れてしまう?訪問看護が楽しかったという気持ち

一和多

これから訪問看護師として働いていくことを検討されている方に、何かメッセージをお願いします!

荻原さん

私は訪問看護師が1人でも増えれば良いなと思っているんですね。

そのために、実習も5校から受けています(笑)。

 

ただ、実習に来た学生さんも「訪問看護が楽しかった」と言ってくれるのですが、卒業して病院で働きはじめる、病院はあまりに忙しすぎて在宅や訪問看護のことを忘れちゃうみたいなんですよ…。

 

ご本人もご家族も満足する生活を送るためのお手伝いができる仕事です。

ご本人やご家族が楽しそうに生活しているご様子や、生活に満足しておられるご様子をみると、自分たちも「(訪問看護を)やって良かったな」という気持ちが心の底から湧き上がります。

私はもう長く訪問看護をしていますが、続けていて良かったなと本当に思っていますよ。

 

なので、いまは病院で働いている看護師さんも、是非どこかで訪問看護のことを思い出してもらえると嬉しいですね(笑)。

一和多

本日はありがとうございました。

取材を終えて

一和多

オシャレなお店や美味しいスイーツ店が立ち並ぶ「自由が丘」の目移りしてしまう商店街を抜けたすぐ先に位置する自由が丘訪問看護ステーション。

全国の訪問看護ステーションでも設立の順番が10位以内に入るという、とても歴史ある訪問看護ステーションなのですが、その歴史は山あり谷あり、笑いあり涙あり…と、とてもこちらには書けなかった内容も盛りだくさんでした。

ただ、現在は事業所運営も安定をして、様々な経歴の方が安心して長く働けている職場になっております。

親子2代が訪問看護師として同じ職場で働いている訪問看護ステーションって、なかなかないと思います。

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 自由が丘訪問看護ステーション
運営会社 社会福祉法人 平成会
所在地 東京都目黒区自由が丘1-23-24-101
最寄り駅 東急東横線「自由が丘」駅 徒歩10分
在籍人数 11名 (NS:5名、PT:2名、OT:2名、ST:2名)
従業員の平均年齢 50歳前後 ※30代前半~60代まで

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