父の最期と私の看護

インタビュー先の事業所とご担当者様

足立 栄子さん 管理者

レディーバグ訪問看護ステーション武蔵小山

東京都・品川区 / 東急目黒線「武蔵小山」駅 徒歩10分

看てきた利用者は1,800名以上! ベテラン訪問看護師の新たな挑戦!

一和多

本日は、訪問看護歴20年、トータル1,800名を超える利用者さんを看られてきた大ベテランの足立さんにインタビューをさせて頂きます。

よろしくお願いします!

足立さん

よろしくお願いします。

一和多

『レディーバグ訪問看護ステーション武蔵小山』は2015年設立とのことですが、まだ設立から間もないだけあって綺麗な事業所ですね!

オシャレで女性らしい雰囲気の事業所だな~と思いました。

足立さん

ありがとうございます!

赤を基調にしていて、内装には少しこだわったんですよ(笑)。

一和多

このおそろいのブーツもカラフルで凄く可愛いです!

足立さん

これは事業所のOPEN祝いに頂いた貰い物なんです(笑)。

一和多

そうなんですね!

光もよく入るし、居心地の良い空間だな~。

学生時代からやりたかった訪問看護! 飛び込んで感じたのは看護の広さ!?

一和多

早速ですが、足立さんのこれまでのご経歴について教えて頂いてもよろしいでしょうか?

足立さん

はい。

私は岐阜県の出身で、看護学校卒業後、地元の病院経験後に、東京に出て病院へ就職をしました。

病院では主に呼吸器科や小児科などを経験して、29歳で訪問看護へ転職。

それからはずっと訪問看護を続けています。

一和多

今でこそ20代で訪問看護をはじめる方も増えてきた印象ですが、当時ですと29歳で訪問看護をはじめるのは、かなり少数だったのではないですか?

足立さん

そうですね。

ただ、私の場合は、学生の時から訪問看護に興味をもっていて、在宅にいきたくて仕方がなかったんですよね(笑)。

 

一方で、「最低限5年は病院で経験を積まないと訪問看護をやることは難しい」と先生から言われていたので、「まずは病院に」と考えての就職でした。

 

なので、29歳になった時には「もういいかな?」といった感じでしたね~。

一和多

病院から、念願だった在宅に移った時の感想としてはいかがでしたか?

足立さん

「この広さはなんだ!?」という感覚でしたねぇ…。

一和多

広さ???

足立さん

そう、『広さ』。

 

「私たち訪問看護師の立ち位置はどこで、どこまで介入をすればいいのだろう?」

「看護の世界ってどこからどこまでなんだろう?」

といったことが、自分の中で定まっていなかったんですよ。

一和多

当時ですと、まだ介護保険もなかった時代だと思うのですが、今でいうケアマネさんがやっているような仕事もされていて、という感じですかね?

足立さん

そうそう!

なので、なんでもマネージメントをしていかないといけなかった。

一和多

病院からいきなりその状況に変わったら、それはとまどうでしょうね…。

足立さん

そうですね…(汗)。

ただ一方で、「この広い場所で活躍できる看護師って凄いな!」と思ったんです。

 

例えば病院でしたら、手元に患者さんのデータがあるので、

「このむくみは、低たんぱくのむくみだな」と、すぐわかるじゃないですか?

ただ、在宅にはそもそもデータがないんですよ。

 

データがない中でアセスメントをして、判断をして、生活の一部に関わりながら環境をマネージメントしていけるって、看護師として本当に素晴らしいなと思いましたね!

家族の最期は自分が看取る! 仕事も家庭も在宅看護づくし!

足立さん

今から5年くらい前に、自分の父親の看取りもやっているんですよ。

一和多

お父さんはどのような最期だったのですか?

足立さん

父はガンで病院に入院をしていたのですが、本人の希望から家に帰ることになったんです。

 

また、私自身も「絶対に自宅で看取ってあげたい」と思いましたし、

「このために自分は訪問看護をやってきたんじゃないかな」とすら思いました。

一和多

お父さんも、やはり最期は病院ではなくご自宅を希望されたのですね…。

足立さん

病院で付き添いをやっていた時は、

「もうダメだ。もう死ぬ。」

としか言わないんですよ。

 

それが家に帰った途端、病院では歩けなかった人が歩きはじめて!

庭を眺めながら「えぇな、えぇな」と言っているんです。

 

むしろ元気になりすぎてしまって、私は一時的な介護休暇を取って実家に戻っていたので、

「これはまずい…、これ以上長引くと辞めないといけないぞ……」と内心思ったりして(笑)。

一和多

それは複雑な状況ですね~(笑)。

足立さん

結局、2ヶ月ほどで亡くなったのですが、そこで看取った時の父の笑顔が忘れられなかったですね。

本当に素晴らしい笑顔でした。

一和多

岐阜のご実家近くには、ガン末期のターミナルでお願いをできる訪問看護ステーションはあったのですか?

足立さん

それが1つだけあったんですよ!

そこにしっかり入って頂いて………、 というより私が教育をさせて頂いて(笑)。

一和多

えぇ(笑)。

足立さん

そちらは、ポートの方を看るのは初めてで、ストマも慣れていないとのことだったんですね。

また、往診の先生も慣れていない様子だったので、そちらも色々と調整をしました。

一和多

ケアチーム側からしたら、「異常に頼もしいご家族」としてうつったでしょうね(笑)。

足立さん

やりにくかったかもしれないですよね~(笑)。

「勉強させて頂きます」と言って、入ってきてくれてはいたのですが…。

 

思い返すと、そのことがキッカケだったと思いますね。

「自分で訪問看護ステーションを持ちたい」

と、ふつふつと思うようになったのは。

足立さん

実は、自分の父親以外にも、主人の父と母も自宅で看取っているんですよね。

あとは、自分の母親と主人を看たら、私の役目は終わりだなと(笑)。

一和多

一家に一人、訪問看護師がいるとなんと頼もしい(笑)。

 

ご主人は「自分の最期も看て欲しい」と言われているんですか?

足立さん

言いますね~~~!

「自分が後は嫌だ」と。

 

「そんなことないから大丈夫。しっかりと責任をはたすから」と言ってます(笑)。

一和多

足立さんは仕事からプライベートまで、もう訪問看護づくしですね(笑)。

足立さん

本当そうですよね(笑)。

根っからの訪問看護好きで、これが天職なんだと思っています。

訪問看護に有利な3つの診療科と、訪問看護師に必要な3つの資質

一和多

僕が訪問看護での転職のご相談を頂く際、

「何を勉強しておいた方が良いですか?」

「どのような科を経験していると有利ですか?」

といった質問をよく頂くんですよね。

 

足立さんはどう思われます?

足立さん

呼吸器、循環器、脳外科はやっておいた方が有利かな~。

 

脳血管疾患の方は多いですし、褥瘡ができてしまうことも多い。

皮膚科の経験は無くても良いのですが、褥瘡の学びはしておいた方が良いかと思いますね。

一和多

なるほどですね~。

足立さんの考える「訪問看護向きな人」ってどんなイメージですか?

足立さん

まずは、学生の時の実習でも、入職後の1日体験でも良いので、訪問看護の現場をみて「訪問看護を好きになりそう」と感じた人ですかね。

もちろん、働く前に訪問看護のイメージが持てずにいる方はたくさんいますし、小さな子供がいてワークライフバランスを重視した結果、訪問看護を選んだという方も多いです。

ただ、入口はそれでも良いのですが、働いてみてから「訪問看護が好きだ!」と感じられる人の方が、はるかに伸びるんですよね。

一和多

その人の看護観や興味のある領域として、在宅が合うかどうか、という点は大きいですね。

足立さん

そうですね。

例えば、「最新の看護に触れていたい」という方は在宅には合わない。

私は、「訪問看護は10年遅れていても良い」と思っているくらいですので。

 

あと、知識や技術も最初はそこまで求めないですね。お勉強は後からでも付いてきます。

 

それよりも、

「優しい方」「傾聴ができる方」「コミュニケーションが好きな方」

在宅・訪問看護においては、そこが一番大切な資質だと思いますよ。

病院ではできないこと! 人の「最も自然な笑顔」を引き出すものとは?

一和多

これまで足立さんが看られてきた2,000名に近い利用者さんの中で、これは印象深かったという利用者さんとのエピソードを教えて頂けますか?

足立さん

やはり、ターミナルのケースは印象に残りますね~~~。

 

奥さまと2人で暮らされていた70代後半の利用者さんがいて、ガンの末期だったのですが主治医は余命3ヶ月ないだろうと見ていたんですね。

 

ただ、その主治医からの宣告を受けた時に奥さまが、

「主人には言わないで下さい」

「告知を受けたら、きっとシュンとしてしまう人なので」

と仰るんです。

 

いまは告知ってあたりまえのようにされるじゃないですか?

ただ、実際にその方のお人柄や生きてきた人生を一番知っているのは奥さまなので、奥さまの選択を尊重しながら進めようということになりました。

一和多

ご自宅に帰るという選択も奥さまが?

足立さん

もちろんご本人の希望もあったのですが、最終的には奥さまの決断でしたね。

病院でできる治療がないのであれば、本人の希望を尊重してあげたい、私が頑張れば良いんだと。

足立さん

ご自宅に戻ってからは本当にリラックスされていましたね。

 

奥さまの料理がとても好きな方で、ほとんどがポートで、一口とか二口しか食べられないのですが、それでも奥さまの料理を食べると本当に幸せそうで…。

 

私は、人が一番自然な笑顔でいられる時って、慣れ親しんだ環境で、慣れ親しんだ「匂い」や「音」、「感覚」に包まれている時だと思うんです。

それが安心感になり、良い時間を過ごすことに繋がっていくのだと。

一和多

長年触れてきた、台所から聞こえてくる包丁の「音」や、料理の「匂い」とか、そういった感覚って、病院では絶対に再現できないですよね。

 

ご自宅での介助は主に奥さまがされたのですか?

足立さん

そう。

奥さまも70代で、決して若くはない年齢だったのですが、オムツ交換から褥瘡のケアまで大変だったと思います。

 

また、この方が「ヘルパーや訪問入浴は入れたくない」という方だったんですね…。

看護師だけはOKで、それ以外はNG。

なので、奥さまは本当に頑張られていましたね。

足立さん

最終的には、余命3ヶ月と言われながら9ヶ月もご自宅で過ごされました。

 

主治医の先生も「これは難しい…」と何度も繰り返したものだから、最期は「もう、これは奥さまの愛です!」なんて言っていて(笑)。

 

ただ、奥さまのそばで一緒に暮らせたことは本当に大きかったと思いますね。

奥さまも「やりきった」という感じでしたし、すごく良いお看取りでした。

一和多

ご本人からも奥さまからも、喜ばれたんじゃないですか?

足立さん

はい。奥さまからは「私の時も来て~」とおっしゃって頂いて。

「まだ早いですから」と(笑)。

師長でもベテランでもない、若手看護師でも感じることができる看護の醍醐味!

一和多

最後となりますが、いま訪問看護への転職を検討されている方に向けたメッセージをお願いできますか?

足立さん

まだ私が訪問看護を始めて間もない頃、亡くなる直前の利用者さんから、

「あたしが死ぬ時は、あなたが来てくれるの?」

と聞かれて、

「あたしが行きます」

と、無意識に答えていて、ハッとしたことがあったんですね。

 

結局、その方のお看取りからエンゼルケアまでしたのですが、

「あなたのお陰で、お家で看取ることができて良かったわ」

と、ご家族から言って頂けたことがとても嬉しかったんです。

 

もし仮にこれが病院でしたら、退院の担当が私だったとしても、

「師長さん、ありがとうございました。」

で終わりですから(笑)。

 

訪問看護は、責任もありますし、大変な面もあるのですが、そのような感謝の言葉がダイレクトに自分へと返ってくる凄い仕事だと、私は今でも思っています。

一和多

本日は貴重なお話をありがとうございました。

取材を終えて

一和多

品川区の人気エリア「武蔵小山」駅の商店街を抜け、歩いて10分ほどの場所に位置するレディーバグ訪問看護ステーション。

事業所自体は新設ではあるのですが、事業所運営や教育・フォロー体制は安定をしており、中には訪看歴1年になる25歳の看護師メンバーもいる程。

代表で訪問看護の大ベテランである足立さんは訪問看護師を「天職」と言い切るほどの訪問看護好きで、訪問看護に関する貴重なエピソードが尽きない尽きない…。

今回の取材では泣く泣くカットしたお話もたくさんありますので、事業所見学へ行かれた際は、是非足立さんご本人から聞いてみて下さい!

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 レディーバグ訪問看護ステーション武蔵小山
運営会社 株式会社レインボー・ナース
所在地 東京都品川区荏原4-14-7 1F
最寄り駅 東急目黒線「武蔵小山」駅 徒歩10分
在籍人数 7名(看護師:常勤3名・非常勤4名)
従業員の平均年齢 30代半ば

この求人にエントリーする

#ホームケアラインについて