型にハメない・ハマらない

インタビュー先の事業所とご担当者様

奥田 玲子さん 管理者 看護師

さんふらわぁ訪問看護リハビリステーション

東京都東村山市

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東村山市の訪問看護事情って?

一和多

西武新宿線「西武新宿」駅から急行で30分ほど、「東村山」で看護師同士のご夫婦でステーション経営をされている、『さんふらわぁ訪問看護リハビリステーション』の管理者、奥田さんにお話お伺い致します。 

 

本日はよろしくお願いします! 

奥田さん

よろしくお願いします。

一和多

東京都東村山市って、タレントの『志村けん』さんのご実家があることで全国的にも有名したね。 

奥田さん

はい、懐かしいですね(苦笑) 

一和多

若い方は知らないかも(苦笑)。 

 

このエリアご利用者の特徴何かありますか? 

奥田さん

具体的なデータではなく、あくまで私の肌感ですが、代々この土地に住んでいる方は少なくて、このエリアに移住してきた1代目、2代目の方が多い印象です 

あとは各町に都営住宅があるので、そこに暮らすご高齢者は多い 

 

さらに加えると、この東村山市の西部地区には訪問看護ステーションが無いですね。

一和多

「少ない」ではなく「無い」? (※2019年9月時点)

奥田さん

はい、そうです。 

 

なので、年々高まっていく在宅ニーズに対して、サービス供給に不安があるエリアと思っています。 

一和多

そうなると、ここで訪問看護をされる奥田さんへの期待は大きいですね。 

責任重大だ……。 

奥田さん

えぇ…(苦笑)。 

えっと、、、頑張りますっ! 

看護でもそれ以外でも、色々なことを経験した先の訪問看護

一和多

奥田さんご出身から東村山なのですか 

奥田さん

いえ、私は名古屋出身です。 

看護学校は岐阜で、その後、名古屋の大学病院に入職しました

一和多

病院で配属はどちらに?? 

奥田さん

内科系の病棟でした 

あとは泌尿器外科にいた時期もありました。 

奥田さん

そもそも1つの領域を極めたい」というよりも、「色々な領域を経験したい」という思いが強かったので、病棟だけでなく外来へ行ったり、老健やデイサービスで働いたりしました。 

一和多

本当に色々な場所を経験されているのですね! 

奥田さん

そうですね。 

「看護以外の仕事もしてみたい」と考えて、違う仕事もしていたらいなので…。 

一和多

え、看護以外のお仕事も!? 

具体的にはなにをされていたのですか?? 

奥田さん

神戸のホテルでウェイターをやっていました 

結婚式やディナーショー料理の配膳をしたり 

一和多

本当に看護とは全く関係ない仕事!! 

 

すごく興味本位な質問なのですが、その時の経験で今に活きているものありますか? 

奥田さん

ありますあります!!! 

 

ホテルって、とてもキッチリとした接客が求められるんすね。 

お客様を観察して、その方が求めているものを察する力ですとか、イベント全体の流れを見ながら他のスタッフと足並みをそろえて行動するという視点などは、今でもすごく役立っています。 

 

接客業における「心遣い」を叩き込まれて、それは病院では学べなかったことですね。 

一和多

なるほど…。 

在宅看護では特に役立つスキルかもしれないですね!

一和多

その後はのようにして訪問看護の道へ??

奥田さん

私、学生時代から「ホスピス」に興味があって、ホスピスやターミナル系の本をたくさん読んでいたんです。 

「ホスピスだと終末期の方でも、まるで自分の家のように過ごすことができるんだ」

考えて、自分もんな看護したいと漠然と思っていました。 

奥田さん

その後、私が20代後半の頃に介護保険がはじまって、在宅に関わる制度が整い始めたタイミングだったんですね。 

「ここなら自分の望む働き方ができそうかな?ちょっとやってみようかな?

と軽い気持ち足を踏み入れたのが訪問看護でした。

一和多

終末期に興味のある方が訪問看護に流れてくることは多いですね。 

 

実際訪問看護の現場はいかがでしたか?

奥田さん

すごく楽しかったです! 

1対1で、本当にその人のためだけに(看護が)できる」

という点にすごく惹かれました。 

 

「私が本当にやりたかったことはこれだ!」と、心から思いましたね。 

一和多

学生時代に抱いていたホスピスに対するイメージが、在宅でうまくマッチしたのですね! 

 

そこから訪問看護一筋だったのでしょうか?? 

奥田さん

そうですね。 

 

一時期、自分足りない手技や最近の病院というものを学びたくて期間限定で病棟勤務をした時期もありましたが、基本的にはずっと訪問看護です。 

一和多

東京でステーション立ち上げられたのどのような経緯で? 

奥田さん

私、東京に来るまで神奈川とか長野とか…各地を転々としていたんです(苦笑)。 

 

ご縁があってたまたま東村山住むようになって、訪問看護を立ち上げたのもなんとなくの流れでした… 

一和多

えぇ…(苦笑)。 

「自分の理想のステーションを創り上げたい!」とかそういうのではなく?? 

奥田さん

多少は「自分の思い通りのステーションができたら楽しいな」という思いはありました(笑) 

 

ただ、それまでも複数のステーションで働いてきて、私はどこで働くのも楽しかったので、自分でステーションを持つことそんなにこだわっていませんでした 

奥田さん

病院時代は、「この病院は合わないな…」とか「この人とはやりづらいな…」と思うこともりましたが、

訪問看護どこで働いてもなんとなく「仲間」って感覚が強かったです。 

一和多

仲間、ですか。

それは病院勤務とはまたう感覚で?? 

奥田さん

そうですね。 

 

訪問看護長く働かれるって色々な考えあっても、基本的には向いている方向は同じだと思うんですよね。 

だから、一緒に働いていてストレスが少ないうか…。 

 

これって、私だけなのかな?(苦笑) 

一和多

看護観が近しい人が残っていくのでしょうね。 

 

あと、訪問看護の場合は1人の時間も多いですよね 

その適度な距離感良いとか 

奥田さん

あ~~~、それもありますね(笑)。 

決まりごとの少ない在宅の現場で求められる思考の転換

一和多

「さんふらわぁ」では大事にしている というとこはありますか? 

奥田さん

はい、臨床経験看護や医療知識というより、

利用者さんが自宅生活することへの関心とか、そのなかでの利用者さんや家族自然なコミュニケーションとか

そういう部分大事にしたいと思っています 

一和多

なるほど。 

 

在宅ですと、医療的な関りと、生活や家族への関りがありますよね。 

特に生活や家族への関りには在宅ならではの部分があると思いますが、訪問看護未経験の方にはどんなふうに伝えていらっしゃるのでしょうか 

奥田さん

そこはとても難しいすね。 

 

よく、病院から在宅に来たスタッフ

病院で色々な決まりのなかで看護をしてきたからこうでなければいけないという思いにとらわれてしまう」といったことを言いますね。 

一和多

病院時代の「枠」から抜け出せないという感じでしょうか 

奥田さん

はい、ルールに意識がきがちで、在宅でいざ何しようと思ったときに戸惑ってしまうんですね。 

 

そういうとき私は「なんでもやってきてください」と伝えています 

奥田さん

それが成果として出ればいいし、

もし成果として出なければ何が失敗したのかを共有したり反省したりしてじゃあこうやってみたら?」とサポートしています。

一和多

生活や家族と関りの部分では、病院での関わりと違って、スタッフそれぞれに違いが出そうですね。 

奥田さん

そうなんです 

 

医療的な関りとは違って指示ありませんから自分で感じ取って関わる必要がありますね。 

の感覚スタッフに伝えることがとても難しくて今でも悩んでいます(汗)

奥田さん

でも、

 

利用者さん家族が、何を考えていて、何を望んでいるのかを受け取ってそれを返していく

 

そんなやりとり自体が本当の看護なのかな

、私はうんです。 

奥田さん

ただ、そういった思考って、極端な話、看護師でなくてもできることなんですね 

 

なので、その部分を「看護師として」支援していくために、必要なことをどうやってスタッフから引き出していくか、そこが私自身としてもまだまだ課題となっています。 

一和多

「さんふらわぁ」は、オンコールの負担や残業が少ないとお聞きしましたが、他にもスタッフの働き方で意識されていることはありますか? 

奥田さん

ママさんナース、プライベートを重視したい方働きやすい環境にしたいと思っています。 

土・日・祝日に休みがとりやすかったり、働き方柔軟に相談できたり。 

奥田さん

あとは、教育面ですね。 

 

「さんふらわぁ」は管理者の私と、同じく看護師の夫との二人体制で管理と教育にあたっているので、手厚くサポートしていつもりです。 

 

特に、同行訪問はそのスタッフが「大丈夫!」と思えるまでサポートしたいなと。 

奥田さん

例えば、利用者さんが「もういいんじゃない?」と仰っても、スタッフが「いや、もうちょっとと言ったらまた同行します(笑)。 

 

それが結局は、利用者さんの安心につながると思うので

一和多

そこは奥様とご主人が二人体制でサポートしているからこその強みですね!

奥田さん

はい。

スタッフが「こっちが駄目だったらこっちに聞いて、こっちが駄目だったらこっちに聞こう1人ではなく2人からのフォローを受けられる安心感を持ってもらえたら嬉しいですね。 

在宅看護は細部に宿る

一和多

これまでの訪問看護での経験で、奥田さんにとって印象深かったご利用者を教えてください!

奥田さん

やはり一番初めに訪問に行った利用者さんですね! 

 

特にお看取り難病といった方ではなかったのですが、今でも忘れられないケースです。 

一和多

どういったケースだったのですか? 

奥田さん

それこそ先ほどの「この人は何が必要だと思っているのか」ということをすごく考えさせられるケースでした。 

 

(訪問看護が)はじめたので、たくさん失敗もしたのですが、何も分からない新人訪問看護師の私を、利用者さんも家族も、とにかく受け入れてくれたんですね。 

その経験があったからこそ今があるのだと思います。 

一和多

はじめての訪問看護でとまどうのは誰しもが通る道ですね…(汗)。 

 

利用者さんはどのような方だったのですか 

奥田さん

女性で、80歳くいだったと思います。 

ご病気は…、たしか脳梗塞だったような…? 

その影響でまったく体を動かせなくて、雰囲気としても「もう老衰が近いなという方でした 

 

旦那さんが家事も介護もすべてされていて、旦那さんも80代だったと思います。 

一和多

その時代、男性が家事や介護を全てされるのは珍しかったのでは? 

奥田さん

そうですよね。 

私たちも頼んでいいのだろうかと思うことがありましたが、その旦那さんは「いいですいいですよ」動いてくださる方でした。 

 

私が「こうしてみたいと提案することも受け入れてくださいました。 

失敗することもあたのですが、そうしたら旦那さんがじゃあこうしてみたら?アドバイスをくださって… 

一和多

すごく受け入の良いご家庭だったですね。 

奥田さん

はい。 

おそらく管理者も新人訪問看護師の私だからこそ担当にしたのだと思います。 

 

あと、偶然ですが私の自宅が近所で何かあったら駆けつけるのに私がちょうど良かったんですね(笑)。 

一和多

それは便利ですね(笑)。

奥田さん

はい(笑)。 

 

夜間何度か行きました。「ごめんね、ごめんね、夜に呼んじゃって」仰っていましたね。 

奥田さん

実は私の前は大先輩が訪問していたので、はじめは「来たよ」言えないほど自分が緊張してことを覚えています。 

旦那さんから「そんなに緊張しなくていいよ」やわらげて頂いて…(苦笑) 

一和多

ベテランから新人へのバトンタッチだったんですね。 

それは緊張しそうだな…(笑)。 

奥田さん

はい(笑)。 

でも旦那さんが「あなたができることをやってくれればいいよ」と言ってくださって…

失敗もあったのですが、私も一生懸命でしたね。 

一和多

たとえばどんな失敗が? 

奥田さん

本当に簡単なことですね 

 

眼脂がうまくとれないとか、オムツがうまくあてられないとか。 

そうすると、旦那さんのほうが介護のベテランなので教えてくださって。 

 

本当に些細なことからなですが、でもそういった経験がすご自分の基本となっていきましたね。 

一和多

今でも活きてというわけですね 

奥田さん

そう思います。 

 

例えば、在宅でオムツ交換ひとつとってもすごく重要なんですね。 

ちゃんとあててない漏れてしまったとき、病院だったら身近にスタッフがたくさんいますが在宅ですとご家族が対応しますよね。 

もしその独居だったら、ずっと冷たいまま次の日まで過ごすかもしれない 

 

ういう細やかなことが大事なのな…教えて頂きましたね。 

一和多

確かに、在宅ではそういった一つ一つが生活に直結していきますね。 

 

ちなみにその方の訪問はのようにして終わられたのですか?

奥田さん

私が別の職場に移ったタイミングでした 

 

でもそのあとも年賀状のやりとりをしていました 

十何年ぐらいだったでしょうか…。

一和多

十数年も…(汗)。 

奥田さん

はい。

最後はお返事が来なくなって、もしかしたら旦那さんも亡くなったのかもしれないですね。 

「なんでやってないの?」ではなく「それイイね!」と言い合えるチームを

一和多

ここまでお話を聞いてきて、奥田さんは個々人が持つ考えや、「枠」にとらわれない考え方をとても大切にしているのだなと感じました。 

奥田さん

たしかに「自由」が好きですね(苦笑)。 

奥田さん

私はいま訪問看護ステーションで管理者をしていますが、スタッフを自分色に染めたいとは思わないんです 

 

在宅は自分の看護ができる場所で、そこがやり甲斐にも繋がっているのだと思います。 

 

 

例えば、病院ですと、すぐ近くに怖い先輩がいて「なんでこれしてないの?」とか言われることもあるじゃないですか? 

 

一方、在宅では自分自身が利用者さんとしっかりと向き合っていくことの方が重要で…。 

一和多

病院では医療的な管理という都合上、スタッフも患者さんも、どうしても枠にはめていく必要がでてきてしまいますね。

奥田さん

はい

でも在宅では、誰かから言われたことだけをやるのではなく、やったことを持って帰ってきて「こういうことしたんです」って言ってもそれを咎める人はいないというか。 

「それ良かったね受け入れてくれるといいますか

奥田さん

みんなそれぞれ看護の考え方がありますし

それぞれがルールの範囲内で自由にやっていって、「それいいね!」と言い合えるチームが良い

と思うんです。 

 

それが例え1年目の人だったとしても、それが良いことであればみんなで共有したい 

一和多

奥田さん自身も他のスタッフも、みんなが自由に、自分のやりたい看護目指すもの叶えるための場所として「さんふらわぁ」ある…と。 

奥田さん

そうですね 

まとめてくださってありがとうございます(苦笑) 

一和多

こちらこそ、本日はありがとうございました! 

取材を終えて

一和多

東京都東村山市、訪問看護過疎エリア(!?)でステーション運営をする「さんふらわぁ訪問看護リハビリステーション」。 

 

在宅看護への熱い想いを持つ方や、ビジネス面での興味・関心が高い方も多い訪問看護ステーションの立ち上げ管理者の中で、そのどちらにも属さない、熱くもなく、ただ決して冷めてもない、人肌程度の心地よい温度感で訪問看護という仕事に向き合う奥田さんの姿勢がとても印象的でした。

 

率直なところで言えば、上昇志向の強い方や、ガンガン働いてガンガン稼ぎたい方に「さんふらわぁ」は合わないと思います。

ひとりひとりの利用者さんとしっかりと向き合いながら、自由に考えて、チームで話し合って、無理のない働き方ができる職場です。

 

訪問看護のリソースが少ないこういった土地だからこそ、焦らず・気負わず末永く地域医療を支えていく、こういった安定感が重要なのかもしれないですね。 

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 さんふらわぁ訪問看護リハビリステーション
運営会社 株式会社SUNFACE
所在地 東京都東村山市美住町2-3-13-401
最寄り駅 ・西武新宿線/国分寺線「東村山駅」西口より徒歩約10分 ・西武新宿線「久米川駅」南口より徒歩約10分 ・西武多摩湖線 「八坂駅」改札口より徒歩約13分
在籍人数 看護師5名、作業療法士1名
従業員の平均年齢 30~40代のスタッフが在籍
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