精神科訪問看護は◯◯
板橋区の不思議エリア「ときわ台」には○○がたくさん!?
よろしくお願いします!
「クローバー訪問看護ステーション板橋」は、ステーション名に「板橋」と入っていますよね。
やはり「板橋区」に思い入れがあってこの名前に?
はい。
まずは板橋区の精神科訪問看護を支えたい、という思いからこのステーション名としました。
たしか板橋区には精神科の病院も多いとか?
そうですね、他の区と比べると多めです。
専門の病院があると、病院の近くにもともと住んでいる方だけでなく、病院に通うために引っ越してくる方もいるので、その分野の患者さんも地域に多くなっていくのだと思います。
そうなのですね。
ちなみに、板橋区の土地柄や、エリア的な特徴は何かありますか?
板橋区って、他の区と比べても広いので一概には言えないんですね…(汗)。
ただ、例外的な話でも良ければ、うちのステーションがある東武東上線の「ときわ台」駅はなぜか裕福な方が多いんですよね。
え、ちょっと意外ですね!?
ちょっと駅近くを歩いただけでも、とても豪邸が多いんですよ。
東武東上線でも「ときわ台」だけ特別ですね(笑)。
「ときわ台」……なぜ……(汗)。
理由はわからないです(苦笑)。
ちなみに、ほかの東武東上線沿線にはそう大差はなくて、埼玉に近づけば近づくほど、その土地に長く住んでいる方が多いのかな?という印象です。
原動力は◯◯! 様々なキャリアの果てにたどり着いた精神科訪問看護!
早速ですが、渡辺さんのご経歴をお伺いさせてください!
ご出身が新潟とお聞きしましたが、どのようなキャリアを?
はい。
新潟で高校を卒業後、専門学校を出て『臨床検査技師』として7年ほど勤務しました。
キャリアのスタートは技師さんだったのですね!
しかも結構長く働いていらっしゃる。
そこからどのようにして看護師になろうと思われたのですか?
臨床検査技師は、検体を預かって、検査して、データを見る、という仕事なのですが、人と接する機会があまりない仕事に飽きてしまい…(汗)。
では何をしよう?と考えた際、ちょうど『介護福祉士』という資格ができた時期でして。
現場経験が3年あれば国家試験の受験資格がえられるということだったので、それならやってみようかなと考えました。
人と触れ合う仕事に惹かれた感じですね!
そうですね。
ただ、いざ施設で介護士をしながら資格をとろうと思っていたときに、たまたま母に癌が見つかったんですね。
余命一年足らずで、入退院を繰り返して、自宅で過ごしていたときは訪問看護も入っていました。
ある日、他の家族が出かけていて、私1人のときに点滴にトラブルが発生しました。
母があたふたしているのを見て、自分もあたふたしてしまい、電話して訪問看護師さんを呼ぶ以外に何もできなくて、さらに慌てて……。
結果的には、看護師さんの到着を待っている間、母に何もしてあげられなかったんです。
それはもどかしい思いをされたのでしょうね…。
はい…。
その後、私が介護士として3年働いている間に母は亡くなったのですが、そのときの無力感がずっと残りました。
「いざというとき私はまた何もできないのではないか?」と、このまま介護福祉士の資格をとることに悩むようになりました。
そんな時に施設の看護師さんから「看護師をやってみれば?」と言われ、そこから『看護師』を意識するようになったんです。
看護師になったのはお母様のことがキッカケにあったのですね。
東京へはいつ頃いらっしゃったのですか?
新潟には正看の学校は少なくて、働きながら通えるところはどこだと調べていくと、やはり東京の学校だ、ということになりました。
その当時、上京して学校に入ったのが30歳を過ぎた頃でしたね。
入学したのが精神科病院の付属看護学校で、そのまま付属病院へ入職しました。
どうして精神科を選ばれたのですか?
実習のときに、精神科が妙に合うなと思ったのがきっかけです。
もともと私はしゃべることが好きなので、患者さんの話を聞いて、自分なりに解釈して、アドバイスして、という精神科看護の流れが自分にマッチしたのだと思います。
本人の不安や困りごとを一緒に考えて、本人が納得して、それがうまい方向に進んでいくのをみることはやりがいがあるなと。
精神科には男性看護師が多い印象がありますが、やはり「男性」という強みを活かしたいという思いもありましたか?
それもありました!
調子が悪い人は男性スタッフが担当につくということが多くて、頼りにされているな、と。
男性ならではの看護ができる仕事なのかなと思ったところも精神科を選んだ理由のひとつかもしれませんね。
訪問看護はどのような経緯ではじめられたのですか?
精神科は入退院を繰り返す方が多いのですが、退院してもすぐに戻ってきてしまう方もいて、「どうしてだろう?」と思っていました。
治療がうまくいっていないとか、自宅に戻って調子を崩したとか、理由は様々なのですが、
「入退院を繰り返さないために何かできることはないのかな?」
と。
反対に、慢性期の病棟にはまったく退院ができない方がいて、
「どうして退院できないのだろう?」
「病院とは違う援助が必要なのかな?」
とこちらにも疑問を持ちました。
その疑問の先に訪問看護があった?
そうですね。
あと、ある程度病院での経験を積んできて、そのまま病院に残って管理職になるよりも、より現場に近い仕事をしたいと考えたときに訪問看護が頭をよぎったというのも…(苦笑)。
なるほど。
臨床検査技師から介護士そして看護師、
新潟から東京、
病院から在宅へ…と、
その時々の環境の変化もあるのですが、何よりも渡辺さんご自身の好奇心に強く突き動かされている感じがしますね(笑)。
そう!!!
好奇心は私の一番のベースかもしれません。
興味があることに飛びつく性格なんです(笑)。
精神科訪問看護は怖くない? そもそも地域で暮らすご利用者って◯◯だよね?
ここからは、こちらのステーションの特徴についてお伺いさせてください!
都内の訪問看護ステーションは電動自転車を移動手段に使用していることが多いですが、
こちらでは、電動自転車に加えて原付バイクも使用されているとか?
はい、スタッフ全員ではなく希望者のみですが、原付を使っているスタッフもおりますね。
都内の訪問看護って、雨の日も雨合羽を着て自転車訪問していますよね?
私の個人的な意見としては屋根付きの原付の方が楽かな…といつも思っています(苦笑)。
私もそう思いますよ!
なので、屋根付きも3台あります(笑)。
ただ、原付って特に女性は苦手意識がある方が多いですよね?
事故が心配とか。
それはよく言われますね。
最初は「全然乗ったことがないので…」と言う方も、慣れていくとビュンビュン走れるようになっていくのですが…。
ただ、原付はあくまでも希望者のみなので、電動自転車のみで訪問をしているスタッフもたくさんいますよ。
今は、自転車も車道を走ることが多いですし、そういう意味では原付と大差ないのかもしれませんね。
はい。
徐々に慣れていけば良いので、怖がらずにまずは乗ってみてもらいたいですね!
精神科特化のこちらのステーションですが、ご利用者さんはどのような方が多いですか?
依存症の方が多いですね。
アルコール依存症や薬物依存症など…。
スタッフがスーパー救急出身の男性看護師が多い点も影響しているかもしれません。
あとは放火や殺人など重大な他害行為を行ったのち、医療観察法の適応となった精神患者さんへの訪問もあります。
こういったケースは複数名で訪問しています。
それはちょっと、「怖い」と感じてしまう方もいそうですね。
そうですね。
ただ、大原則として
精神科で訪問看護を受けている方は、病院というステージを経て、地域やお家で過ごせるくらいに精神症状は安定している状態です。
「怖い」と思われる方がいるのも理解はしているのですが、そういったイメージを少しでも変えていけるといいなと思っています。
たしかに、そもそも大変な症状にある方は病棟・施設から出られないですものね。
私が精神科訪問看護のことを案内する際も、「医師が地域で過ごせると判断した方が対象なんですよ」と伝えるようにしています。
本当そうなんですよ!
退院後、調子が悪くなれば我々も再入院を勧めていきますし。
当然の話ではあるのですが…
リスクが垣間見れる方への訪問や、
そもそも精神科訪問看護に不安があるスタッフの場合は、スーパー救急出身の他スタッフからのフォローも受けれるんですよね??
もちろん大丈夫ですよ!
経験がないとやはり不安があると思いますが、
最初は当然、同行訪問からスタートしていきますし、
そのあともしっかりサポートしていきます。
それは心強いですね!
精神科のご利用者からの、「◯◯」という言葉の受け取り方
渡辺さんが出会ったご利用者さんで印象深かった方はいらっしゃいますか?
1人、うちのステーションとしても絶対に忘れられない方がいますね。
50代の女性の方でした。
独身の方なのですが、年齢に対してかなり若々しい印象の方で、年下の方とお付き合いしていて、恋愛相談を受けることもありました。
「彼氏とうまくいかない」とか。
我々に不満なり不安なりをいろいろと話してくれるので、我々もそうかそうかと聞いて…
信頼関係を構築しながら、なんとか自宅で過ごしている方でしたね。
ある日、訪問したときに応答がなくて。
連絡もないし、電話にも出ない。
家にいるのかいないのかもわからない。
普段はそういうことが全くない方だったので。
お隣に住んでいた大家さんに相談したところ、カギを開けてくれました。
中で縊首していたんですね…。
理由は、本人にしかわかりません。
それは……。
なにか兆しはあったのですか?
うーん…、
直前の訪問でもたしかに元気はなかったのですが、死をほのめかす発言はなかったので、我々もそこまで深くは心配していなかったんですよね…。
ご病気はなんだったのですか?
双極性障害ですね。
だから、調子が高くて多弁なときもあれば、低くて発語すらないときもありました。
でも、通院も服薬もできていましたし「何かあったら電話くださいね」と言えば電話してくれていましたし、大変そうなときは会いに行けばなんとかなっていました。
信頼関係は築けていると思っていましたし、亡くなる間際の訪問のときに「これは入院しなくちゃ」とまでは思うようなシグナルは全く感じ取れなかったんです。
まさかこういう結末になるとは思わなくて、我々もかなりのショックを受けましたね…。
精神科の訪問看護で利用者さんが自殺してしまうことはどれくらいあるものなのでしょうか?
滅多にないですが、「ないことはない」という温度感ですね…。
正直な話、サインを見つけるのはとても難しい…。
利用者さんで「死にたい」と言う方は結構いらっしゃいます。
口癖のように…。
こちらも「いつものこと」「また言ってる」という感覚が沸いてくることもありましたが、この姿勢は正して、すべてしっかりと受け止めようとスタッフみんなで話し合いましたね。
病院はすべて管理されていて、刃物もなければ人も常にいます。
在宅はなんでもありますからね。
刃物もあれば、すぐ首も吊れるし、飛び降りられるし、飛び込めるし。
在宅では、もっとシビアに考えたほうがよいねという話もしました。
「いつもの口癖の人」でも、軽く考えないでしっかり見ようと。
精神科看護における、病院と在宅の大きな違いということですね。
はい。
なので、ちょっと話はそれますが、
訪問看護では担当制だったりチーム制だったり様々ですが、我々の特徴のひとつとしては担当を持たないようにしています。
看護師それぞれ感じ方が違うので、
多くの人の見方で関わって、それを共有して、
利用者さんの状態を意識的に色々な視点から集めています。
複数の看護の目を入れるということですね。
利用者さんにとっても様々な人に関わることで、社会トレーニングのひとつにもなりそうですね。
精神科病棟の患者さんと、精神科訪問看護の利用者さんとの違いは◯◯
精神科訪問看護でこんなところはすごく楽しいなとか、やり甲斐があるなと感じることはありますか?
やり甲斐ですか…言葉にするのは難しいですが…。
精神疾患の方は、素直な方が多いですね。「助けてほしい」ということを素直に表出してくれます。
それを受け止めて、応えて、すると当然その反応が返ってくる。
そのときに「あれは嬉しかった」とか「一緒に解決できたね」みたいな感情の共有といいますか…、なんとも表現できない感じがあるんですね(笑)。
それは病棟のときとは違うものなのですか?
これがまったく違うんですよ(笑)。
病棟は患者さんの基本スタンスが「嫌」ですから。
入院がまず嫌ですし、そこにいる看護師も、先生も基本嫌いなんです。
よく分からない薬、規則正しい生活、寝ていれば起こされ、ご飯は早く食べろ、風呂も早く入れ、とすべて押し付けられているイメージだと思います。
治療のためとはいえ、徹底的に管理される生活は息が詰まりそうですね…。
そうですよね!
だから「看護師が怖い」と仰る方もいますよ。
でも、在宅では我々は味方なんです。
「入院しないために我々がいますよ。地域でうまく生活していくために我々が協力します、サポートします。なるべく入院したくないですよね」
といったスタンスなんですね。
地域で暮らすための、二人三脚のパートナーのような存在ですね!
そうなんですよ!
ご近所づきあいで困っているとか、家族との関係で困っているとか、利用者さんによって様々ですが、その間の架け橋になる立場でいられたらいいですね。
本日はありがとうございました!
取材を終えて
東京都板橋区「ときわ台」駅。大きなお宅も散見される閑静な住宅街を抜けた集合住宅の一室に事業所を構える「クローバー訪問看護ステーション板橋」。
精神特化のこちらのステーションでは、精神科スーパー救急病棟出身の男性スタッフが多数在籍されております。
男性比率高めのこちらには、どこか男臭い無骨な空気も流れつつ、精神科領域においてはそれが心強くもあり、また、人によってはカラッとしたドライな職場の雰囲気が心地よく感じられるかもしれません。
板橋エリアの精神科訪問看護に真っ向から取り組んでいきたいという方はもちろん、
精神科訪看ならではのワークライフバランスの良さに惹かれた方も気軽にご検討ください。
原付バイク、慣れると絶対に楽ですよ!(笑)
事業所情報
事業所名 | クローバー訪問看護ステーション板橋 |
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運営会社 | 一般社団法人フォーリーフ |
所在地 | 東京都板橋区前野町2-4-5 大商第一マンション303 |
最寄り駅 | 東武東上線「ときわ台」駅(徒歩8分)、都営三田線「本蓮沼」駅(徒歩20分) |
在籍人数 | 看護師21名(常勤1名、非常勤20名)、作業療法士1名(常勤1名)、精神保健福祉士(常勤1名) |
従業員の平均年齢 | 30代半ば |
ステーション詳細 | » より詳細なステーション情報を見る |
本日は、東京都板橋区で精神科特化の訪問看護ステーションを運営されている『クローバー訪問看護ステーション板橋』の管理者の渡辺さんからお話を伺います。
よろしくお願い致します。