川崎、良い街、一度はおいで

インタビュー先の事業所とご担当者様

阿部 弘子さん 管理者

りんこう訪問看護ステーション

神奈川県川崎市

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「川崎」ってどんな街??

一和多

本日は、神奈川県の川崎市川崎区で、長く地域医療を支えてきた総合川崎臨港病院の、

病院に併設する付属訪問看護ステーションで管理者を務める、緩和ケア認定看護師の阿部さんにインタビューをいたします。

 

よろしくお願いします。

阿部さん

よろしくお願いします!!!

一和多

ちょっと…勝手な僕のイメージで誠に恐縮なのですが、川崎って不良が多いイメージがあって…その辺は……?(汗)

阿部さん

間違いなく多いです(笑)。

 

川崎って、そもそも工場地帯で、地方から出稼ぎで移住して来た方が多いエリアなんです。

 

そこで頑張って成功していった人たちもいれば、現在は生活保護を受けている人たちもいます。

 

さらに最近では、都内で働かれている若い夫婦が、多摩川沿いのマンションを購入されて引っ越してきたり、沖縄・韓国・南米・東南アジアの方のコミュニティができていたりと(笑)。

一和多

かなりカオスな感じですね。(笑)

阿部さん

はい、そこが楽しくもあるのですが(笑)。

一和多

そうなると、ご利用者さんはどのような方が多いですか??

阿部さん

生活保護の方は一定数いますし、結構お酒飲みで認知症が進んでしまっている方・糖尿病の方も多いかなぁ…。

 

ただ、頑固者で受け入れの悪い方も、不思議とどこか人情味はあるんですよね。

 

最初は「帰れ!」と言って突き返されてしまっても、次に訪問をするとお菓子が用意されていて、

「この前は言いすぎた、ごめん」と、言葉少なく謝って頂いたりして(笑)。

一和多

色々な階層・背景の人たちが住みながら、下町感もある、摩訶不思議エリアって感じですね(笑)。

新卒も受け入れOKの教育体制と、ママさんも安心の託児所付き施設

一和多

こちらのステーションというより、こちらの法人全体のお話になってしまうのですが、院長も看護部長も、皆さん、お若いですよね?

阿部さん

そうなんです(笑)。

 

院長がいま50歳手前、看護部長も40歳手前といった年齢ですね。

一和多

やはり、法人全体の雰囲気としても、

「新しいことに挑戦しよう!」

といった若い感じはありますか?

阿部さん

あると思いますよ!

 

もちろん、古くても良いもの・大切なものは残しながらではあるのですが、

「地域包括ケアシステム」という視点から、これまでの縦割りな組織編成は崩しつつ、横の連携・外の連携をしていこう! といった方針を打ち出しています。

一和多

病院付属のステーションの中には、病院と訪問看護との連携があまり上手くいっていないところも、決して少なくない印象を受けるのですが、こちらではそういった壁のようなものは、特に感じないですか??

阿部さん

そうですね。

 

病棟に限らず、外来のスタッフとの連携も密ですし、例えば先生たちにも、

 

「こんな状況なので、朝昼夕もインスリン打てません! 朝だけにしてください!」

 

とバンバン提案をしています。

 

いち訪問看護師としても、本当に働きやすい環境だと思いますよ。

一和多

訪問看護経験者なら、その環境の有り難さは、身にしみると思いますね(笑)。

 

そのような雰囲気は、以前からこちらの病院の文化としてあったのですか?

阿部さん

全然そんなことなくって、ここ数年ですね。

 

以前は、「訪問看護と訪問介護の区別も曖昧」なくらいでした(笑)。

 

いまの院長に代替わりをして、訪問診療をやるようになってから、少しずつ変わっていきました。

阿部さん

いまの院長が、

 

「この病院には、おじいちゃんの代から三世代に渡って長く通ってくれている人たちがいて、そんな人たちが通えなくなっていった時に、どんな恩返しができるだろう? と考えた先が、訪問診療や訪問看護だ。」

 

と考えるようになり、それからですね。

一和多

そういった想いがあって、在宅医療に取り組んでいるのは、とても素敵ですね!

一和多

訪問看護のスタッフについてなのですが、

新卒で入職をされた20代の方からベテランの50代まで、幅広い年齢層の方が在籍をされていると伺いました。

 

訪問看護で新卒採用をするって、結構な決断だったのではないですか?

阿部さん

はい、ただ、正直そんなに心配はしていなかったんですよね(笑)。

 

面接をした時に、非常に明るいコミュニケーションを取る子だなと思いましたし、何よりも

 

「訪問看護師になりたい」といった情熱と目的意識も感じられた

 

ので、まぁ大丈夫かなと。

阿部さん

うちは、技術や知識の面は私たちが現場で教えることができますし、加えて、病院での研修も利用可能です。

 

事前に「こんな事例やあんな事例があったら教えて!」と病院側に声をかけておけば、そちらの経験もカバーできるので。

一和多

それは新卒で入職をされた方も、安心でしょうね~!

 

あと、こちらのステーションの上の階が託児所になっているのですよね?

 

これはママさん看護師にとっては、すごくすごく有り難いのではないですか??

阿部さん

そこは、一和多さんに指摘されて気づいた盲点でした(笑)。

 

私たちは、託児所があるのが当たり前になってしまっていたので…。

一和多

いやいやいや!!!

 

都内もその近郊も、訪問看護で託児所付きのところは、本当に少ないですから(笑)。

阿部さん

そうですよね…(苦笑)。

 

託児所は、事業所の真上にありますので、送り迎えはもちろん、業務の合間にちょっと様子を見に行くこともできます。

 

あと、常勤でも非常勤でも利用できるので、その点も使いやすいかな~と!

病気をみれる看護師ではなく、病気と共にある生活をみれる看護師になりたい

一和多

ここからは、阿部さんのご経歴についてお伺いをさせて頂きます!

 

阿部さんご自身も、こちら川崎の出身なんですよね?

阿部さん

生まれも育ちも、川崎でございます。

 

川崎愛は強い方かと(笑)。

一和多

(笑)。

 

看護学校の卒業後は、どのようなキャリアを??

阿部さん

関東労災病院でした。

 

最初は脳神経外科に配属され、結婚・出産での1年間の産休をはさみ、外来やICUも経験して、計10年近く在籍したかな?

一和多

急性期が長い感じですね。

 

そちらは、ご自身で希望をされたのですか?

阿部さん

そうですそうです!

 

実習先が脳外だったのですが、そこで「絶対に脳外!」と心に決め、希望者も多い病棟だったので、

面接の時に、「バリバリ働きます!」と猛アピールをしました(笑)。

一和多

阿部さんは、急性期の忙しい感じも合いそうですね(笑)。

阿部さん

楽しかったですね(笑)。

 

救急車を受けて、オペが始まって、術後の処置をして…、と、そこで一通りの経験はさせてもらえたと思っています。

一和多

そこから何故、訪問看護を??

阿部さん

かなり私事な話になってしまうのですが、うちの子どもが802グラムの極小未熟児で産まれたんですね。

 

それで、出産時に脳内出血をおこしてしまい、後遺症が残り…。

 

子どもの世話もあるので、より家から近くの職場で働く必要があった、という理由もありましたし、

あと障がいを持つ子どもの親となった時に、

 

「自分はこれまで病気しか見てこなかったんだな…」

 

と思うようになったんです。

阿部さん

「病気だけではなく、その人の生活や人生も看れるようになりたい」

 

「病気のあるAさんではなく、Aさんができることは何だろう?と考えられるようになりたい」

 

と考えた時に、訪問看護へと足が向いていった、という経緯ですね

一和多

そんなご事情があったのですね……。

 

ちなみに、訪問看護に入られてからの仕事はどうでした?

 

やはり、病院との違いでの苦労などはありましたか??

阿部さん

たくさんありましたよ(笑)。

 

やはり、当時は若かったので、「この若者が…」といった目で見られることも多かったですし、

病院のように自分が管理をする側ではない、対等な関係の中で、どうやって人間関係を構築していくのか? といった点も悩みました。

阿部さん

あとは、終末期のご利用者さんと向き合っていく中で、利用者さんの気持ちや状態を医師へ正確に伝え、また、医師から信頼され、治療方針を正確に利用者さんへ伝えていくためには、

自分がより深い知識を身に着けないといけないな、と痛感をしたんです。

 

それが、緩和ケア認定の資格を取ろうと考えるキッカケになりましたね。

最期のパーティーは誰のため?

一和多

阿部さんが、これまで在宅の現場で看てこられた中で、印象深かったご利用者さんのエピソードを教えて頂けますか?

阿部さん

ちょっとベタな感じのやつでも良いですか…?(汗)

一和多

もちろんですっ!!!(笑)

阿部さん

奥さまは60代、ご主人は70代のご夫婦で、ご利用者は奥さま。

膵臓がんの末期でした。

 

訪問看護は1年半くらい介入をしていたのですが、私たちも「そろそろかな…」という状態に差し掛かっていました。

阿部さん

そんなタイミングでご主人から、

 

「彼女には、これまで散々迷惑をかけてきたので、最期に何かをしてあげたい」

 

といったご相談を頂きました。

それで話し合った結果、結婚記念日がちょうど一ヶ月後だったので、

『ちょっと早めの』といったサブタイトル付きで、結婚記念パーティーをやろうという話になりました。

阿部さん

ご自宅のすぐ隣に、息子さん夫婦がお住まいだったので、ご夫婦、息子さん夫婦、お孫さんを交えてのパーティー。

 

お孫さん達が、輪っかの飾り付けを作ってくれてお部屋を飾り、

いつもヨレヨレの格好ばかりしていたご主人も、その時はピチッとした格好をして、プレゼントまで用意をされて、

最後には、みんなで記念撮影をしました。

一和多

素敵なパーティーですね……!

 

その後、奥さまは本当の結婚記念日まで、在命されたのですか??

阿部さん

もたなかったですね。

 

パーティーの後、1週間くらいでお亡くなりになりました。

阿部さん

パーティーの前日譚になるのですが、私と2人きりになった時に奥さまが、

 

「お父さんは何もできない人なの。お父さんのことが心配だから、よろしくね」

 

といったことを仰るんですね。

一和多

すぐ隣に、息子さん家族も住んでいらしたんですよね?

阿部さん

奥さまの心配は、まさにそこだったんです……。

 

決して疎遠という程ではなかったのですが、その時のご主人は、息子さんと話す機会がすっかり減ってしまい、少し距離ができてしまっていたんですね。

阿部さん

ただ、結婚記念パーティーがキッカケとなって、それからご主人と息子さんでお話をする機会が増えて、(心の)距離感もグッと縮まっていったんです。

 

ご主人もそれがすごく嬉しかったみたいで、「息子との関係が良くなったんだ」と喜んでいました。

阿部さん

そんな関係は、お母さんが亡くなった後、現在も続いていて、

今では一緒に島へ旅行に行ったり、一緒に釣りをしたり、

「こんな大きな魚が釣れたよ!」

と、連絡を取り合うこともできるようになったんです。

一和多

なんだか、奥さまのために開催したパーティーが、

結果的に、残されたご家族を繋げていくためのパーティーになっていった感じですね…。

 

奥さまからの、最期のプレゼントのような。

阿部さん

本当、そうなんです!!!

 

いまのご主人の姿をみたら、奥さまもすごく喜ぶと思います!

一和多

めちゃくちゃ良い話じゃないですか…。

 

ちなみにご主人は、今もお元気で??

阿部さん

はい、ステーションにもちょくちょく顔を出してくれますよ。

 

少し高脂血症や糖尿病があるので、そこの指導をしながら、

 

「お父さんに何かあったら、私たちが入るからね!」

 

と言ってます(笑)。

一和多

奥さまからも頼まれてますからね(笑)。

病棟では見えなかったもの、在宅では見過ごせないもの

一和多

先程のエピソードのご家庭もそうですが、こちらのステーションでは、終末期のご利用者が多いじゃないですか?

 

阿部さんご自身も、緩和ケアの認定を取られていますし、やはり

「ターミナルケア」や「お看取り」への想い入れのようなものはありますか??

阿部さん

そうですね。

 

毎日の訪問をしていてすごく感じるのですが、この川崎という街に暮らされている方は、やっぱり川崎が好きですし、裕福な方でも貧しい方でも、皆さんやっぱりお家が好きなんです。

 

そんな自分の住む街や、生活する家の延長線上に、「死」といったものがあるのであれば、

繰り返す毎日の先で当たり前に死を迎え入れていく、

そんなお手伝いをできたら良いなと思っています。

一和多

「自分の暮らす街や、自分の家が好きなんだな」

って感覚は、訪問看護を始めてから意識をするように??

阿部さん

そうですね…。

 

私の場合は、超急性期な職場で働いていたから、といった理由もあるのですが、やはり在宅のイメージは持てていなかったと思います。

 

例えば、以前ですと、生活歴を確認していない状態で、すごく大切なお薬が三回に分けて処方されていても、特に疑問は持たなかったのですが、今ですと、

 

「この方、朝ごはん食べないのに、3回で出されても(朝の分は)飲まないよね?」

 

といったことを、考えるようになりました。

 

以前は、「生活」や「暮らし」について、考えているようで考えていなかったのだと思います。

一和多

忙しい病棟の看護師さんに、そういったところにまで意識を広げてもらうのは、なかなかに無理があるような感じもしますけどね…(汗)。

 

ちなみに、病院と在宅、どちらも経験された阿部さんから見た、

在宅の魅力ってどのような点にあると思いますか??

阿部さん

なんだろうな……。

 

私の主観ですけど、看護師になる方って、結構みんな看護が好きだと思うんですね。

 

その、「好き」という気持ちが、

 

「看護ってこんなに素晴らしいんだ!」

「看護でこんなことができるんだ!」

 

っていう気持ちにまで昇華されるヒントが、在宅にはあるのかなと思います。

 

事実、在宅の現場に出るようになって、私はより看護が好きになりましたね(笑)。

一和多

本日はありがとうございました。

取材を終えて

一和多

川崎市川崎区の住宅街の中で、三世代にも渡る患者さんの地域医療を支えてきた総合川崎臨港病院。

 

その病院の道路を挟んだ目の前に、『りんこう訪問看護ステーション』があります。

 

神奈川県内でも、かなりのディープなエリアかと思える川崎エリアの特徴について、(分量のかね合いで)泣く泣くカットした面白エピソードもたくさんありました。

 

ただ、そのようなエリアだからこそ、こちらの訪問看護ステーションでは、人と地域との繋がりや、人と人との支え合いを、とても強く感じられる働き方ができるのではないかと思います。

 

本インタビューの合間も、ご利用者の家族が気軽に来所をされている様子はとても印象的でした。

 

川崎愛がある方も、緩和ケア認定看護師と一緒に終末期を看たい方も、保育園に落選して子どもの預け先に困っている方でも結構ですので(笑)、

興味を持たれた方は、気軽にこちらのドアを叩いてみて下さい!

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 りんこう訪問看護ステーション
運営会社 医療法人社団 和光会 総合川崎臨港病院
所在地 神奈川県川崎市川崎区中島3-6-8 コートクレール1F
最寄り駅 京急大師線「鈴木町」駅(徒歩15分)、京浜急行本線「京急川崎」駅(徒歩25分)
在籍人数 4名(看護師:常勤3名・非常勤1名)
従業員の平均年齢 20~50代の幅広い年齢層が活躍!
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