記録ではなく、記憶に残る看護

インタビュー先の事業所とご担当者様

坪内 紀子さん 管理者

おんびっと訪問看護ステーション

東京都豊島区

病院での人間関係が合わず、一時は看護師を辞めようとライセンスの返却まで考えた看護師がたどり着いた、在宅看護の楽しさと自由さとは?

看護教育のために

一和多

本日は、豊島区巣鴨にある、おんびっと訪問看護ステーションの管理者、坪内さんにお話を伺います。

 

よろしくお願いします。

坪内さん

よろしくお願いします。

一和多

こちらでは、積極的に学生の実習受け入れをされているとか?

坪内さん

そうですね 。

今年は、4校受けいれました。

 

私は、自分でダイレクトメールを送って、来たいと言ってきた学校さんを、普通に受け入れてるだけなんですよ。

一和多

ご自身から連絡を送っているのはどうしてですか?

坪内さん

20年くらい前かな?

 

昔は、学校の教員が、菓子折り持って営業に来たんですよ。

実習生受け入れてくれませんかって。

 

でも、学校の数がすごい増えてるので、馬鹿馬鹿しいなと思ったんです。

そこが発端です。

学校の教員は、本来教育特化していただきたい、 受け入れの時期になったら営業に回るのに、時間を費やしてほしくないんです。

一和多

それよりも、学生の教育に力を入れてほしい?

坪内さん

はい。

なので、自分から送ればいいという発想です。(笑)

なんでも受ける研修期間のようなステーション

一和多

学生の受け入れを結構されるようですが、

この他に、ステーションの特徴はありますか?

坪内さん

会社の名前の由来でもあるですけど、

こういう人は看れませんっていうのは、なしなんですよ。

オールマイティー。

一和多

ターミナルでも、小児でも、精神でも?

坪内さん

はい。

なんでもあり、というスタンスですね。

一和多

その会社の名前おんびっとは、どういう意味ですか

坪内さん

全部、英語の頭文字なんですよ。

 

OはOriginal(オリジナル) 

NはNursing(ナーシング) 

BはBearer(ベアラ)。 

IはIndependence(インデペンデンス) 

TはTerminal(ターミナル)

 

Bearerは、運ぶ人、運搬人、担い手みたいな意味ですね。

 

この語呂をあわせたら、こうなったんですよ。

一和多

病状問わず、担い手として、看ていくと。

坪内さん

そうです。

坪内さん

いろんな人は受け入れるんですけど、ステーションをそんなに大きくしたり、多店舗展開したり、お客さん数増やしたりは考えてないです。 

どちらかというと、研修機関って感じですね。

私のコンサル先からも研修に来ますし、実習生も来ます。

 

看護師の研修機関のようなステーションですね。 

一和多

看護学校と現場との中間となる感じ、在宅がもっと広がっているみたいな?

坪内さん

はい、そうです。

あとは、訪問看護をやってはいるけど、立ち止まってしまっている所の受け入れ先、みたいな感じであればいいなって思ってます。

 

そして、スタッフみんなが気を良く働いてくれれば、なによりです。

一和多

スタッフの話ですが、スタッフ間のコミュニケーションは、活発ですか

坪内さん

そうですね。

 

お子様も大歓迎で、カンファレンスは子連れで参加できるようにしています。

 

広いスペースに遊具も置いてますから、子どもたちも楽しく遊べる環境にはなってます。

 

カンファレンス後は、みんなでご飯食べに行ったりもしています。

坪内さん

そういう企画するのは好きなので、去年初めてやったBBQとか、超面白かったですよ。

一和多

スタッフやスタッフのご家族などが集まった感じですか

坪内さん

そうです。

あとは利用者さんやそのご家族。

ご夫婦二人暮らしでつまらないと言うので、呼んだりしました。

子どもがいなくて、旦那さん呼吸器つかってるんですけど、レスパイト入院中に合わせて開いたんです。

一和多

看護師さんが近くにいる状況なら、利用者さんも安心ですね。

坪内さん

そうですね。

すごく楽しかったし、すごく喜んで頂けたと思います。

差し入れを、たくさん持ってきていただきました。(笑)

褥瘡は不治の病だと思っていた

一和多

もともとご出身は、巣鴨のほうで?

坪内さん

いえいえ、大阪です。

東京に出てきたのは、18歳で看護学校入学のときです。

一和多

東京に来て、まず准看の資格を取られて、その後に正看の資格を取得されたですよね?

坪内さん

はい、そうです。 

准看取ったあとに、ちゃんと勉強しようと思って、正看護師の学校に行くことにしたんですよね。

一和多

勉強しようと思った理由というのは

坪内さん

看護おもしろいなって思ったんですよ。

 

准看の学生だったときに、1週間おやすみもらって帰省したんです。

そのときに、高齢者病棟みたいところで、おじいちゃんが寝たきりだったんですよ。

 

そのあと、また一週間経って帰省したら病院からいなくなってたんです。

退院したんだ!良かったって思ったら、前回会った時に少しあった仙骨部の褥瘡が、背中一面に一週間で広がって亡くなっていたんです。

一和多

えーーー、一週間で?

坪内さん

そこは体交もなにもしない病院でして、同一体位でおむつ交換だけだったみたいです。

 

それを目の当たりにして、

褥瘡は、人を死なせてしまう病気だと思ったんです。

 

そのあと実習に行った所で、受け持った方が、腸骨に褥瘡がある方だったので、

この人もいずれ広がって亡くなるんだって思ったんですよ。

 

そしたら、2週間で治ったんですね。

 

「えーなんで治ったんですか?」

って担当者に聞いたら、

 

「え、バカじゃない」

って言われたのが、きっかけかな(笑)

一和多

なるほど。(笑) 

正看護師とったあとに、女子医に行かれたんですか? 

坪内さん

そうです、女子医脳外科です。

一和多

そこはどうでしたか?

坪内さん

女子医に、今でも残っている看護師や医師がいるんですけど、

私のことを記録はないけど、記憶に残る看護師だったね、っていうんですよ。(笑)

 

いまの部長さんにも、すごい怒られたり、追いかけられたりしました。

一和多

異様に患者さんに好かれるとかですか

坪内さん

そうですね。

検温で大部屋の男性の部屋に入ったら、患者さん家族全員が集合してて、拍手で迎えられて、

いま人気投票やったら、坪内さんがダントツ1位だからって言われたり…、仕事中ですよ!

一和多

(笑) 

その後、在宅に行くきっかけは、なんだったんですか?

坪内さん

在宅始める前に、もう看護師やめよう、って思ったですよね。

坪内さん

看護師自体をやめたくて、厚労省に電話して、

「免許を返したいですけど、どうしたらいいですか」

って聞いたんです。

 

そしたら、頭のおかしい人だと思われて、

「最寄りの保健所に電話して聞いてみてください」

って言われて

坪内さん

保健所に電話したら、そこでも頭のおかしい人だと思われて、

「返そうがちぎろうが、永久ライセンスだから、ずっと残るし、いつでも再発行できるものなのよ」

って、言われて、

 

「げっ!」

って驚いて。

 

お金も底をつくし、アルバイトしようと思って、たまたま行ったのが、訪問看護だったです。

一和多

資格破棄したいって、またどうして?

坪内さん

周りの人間関係が嫌になっちゃっですよね、看護師も医師も。

一和多

なるほど…。 

在宅はやってみて、いかがでしたか?

坪内さん

最初に同行した1件目のお宅で、1時間ちょっと居たんですよ。

 

お風呂介助して、リハビリやって、軟膏塗って、飲水して。

いま死語みたいなんですけど、ベットサイドナーシングって良く言われるものだったんです。

 

そんなこと病院では出来ない時代だったんですよ。 

業務が忙しすぎて、患者と向き合う時間がろくにないんですから。

 

だから、この1時間マンツーマンが驚きでした。

信じられなくて、帰ってすぐ本で調べたら、最低30分近く居なさいって国が定めてたんですよね。

 

うえー!ってびっくりして、法律で決まっているよ!って、衝撃を受けました。 

 

ただ、当時は派遣だったので、1ヶ月の任期を終えてすぐ辞めたんです。

 

それから、何に転職しようかなって思ってたときに、派遣先のステーションからめちゃくちゃ電話があって、患者さんが坪内さんが来ないって言って、文句を言ってて大変だ、って言われて…。

一和多

また、患者さんから人気が

坪内さん

で、粘り強く連絡してくるので、そこに復帰したんです。

 

それから、何だかんだ縁があって、在宅全部で4社勤めて、その後に独立した感じですね。

ご家族と喧嘩

一和多

印象深かった利用者さんのエピソードを教えてください。

坪内さん

ALSで呼吸器をつけた、大学教授のご家族。

 

退院時カンファから行って、他のステーションが一切入ってない。

 

迎え入れるところから始まったんですけど、

初日に娘と奥さんと散々喧嘩して、とにかくいっぱい買い物行かせたんですよ。

一和多

だれが喧嘩したですか…

坪内さん

私です。

私が奥さんと娘さんと喧嘩したんですよ。

 

あまりにも環境が整っていなくて、ふざけんなって話になったんです。

 

それで、ホームセンター行って色々買ってこいって、ものすごい喧嘩をしました。

一和多

経済的な意味で、整っていなかったですか?

坪内さん

あれは、怠慢!

一和多

なるほど。(笑) 

1番最初の介入したときは、具体的にどんな状況だったんですか?

坪内さん

ベットだけが入ってて、吸引機が必要なのに、それを置く場所もないし、なにも揃っていないんです。

 

あと、真夏の暑い時期に帰ってきたんですけど、エアコンが壊れていたりと。

一和多

ネグレクト的なことは?

坪内さん

全然ないです。

一和多

ご主人と仲が悪かった?

坪内さん

いやそんなことなかったですよ。

ラブラブでした。

一和多

では、どうして?

坪内さん

ズボラな奥さんだったんですよ。(笑) 

 

私が色々指示して、整えて、そこからは問題なかったですね。

その後、普通に受け入れてくださって、毎日訪問もして私のお客さん見学させてほしい、という連絡も快く受け入れてくれて

あのとき喧嘩したのに、覚えてないのかなっていうくらいでした。

一和多

雨降って地固まる、というか何というか(笑)。

書に学び、人に学びが楽しい訪問看護

一和多

最後に、訪問看護に移りたいと思っている感じへのメッセージをください。

坪内さん

まず、医者が大好きな看護師は、ダメです。

 

医者に対して思うところがある看護師は、医者がいないので良い環境だと思います。

 

そこは絶対売りですよね。

「なにこのバカ医者」

って思って働いている看護師は、結構いると思うので。

一和多

……(汗)。

坪内さん

あとは、やっぱり利用者さんと向かい合ってる時間が長いから、

ほんとに看護が好きだったら、楽しくてしょうがないですけどね。

 

学生さんは、

「限られた時間の中で、あれだけやってすごい」

なんて言いますけど、

病院のほうが時間限られてると思いますよ。

 

在宅は、

「ちょっと待っててください」

がないので、ほんとに看護が好きだったら、在宅をやったほうがいいと思います。

一和多

在宅と相性が悪い人は、どんな方だと思いますか?

坪内さん

医者好き、上から目線、禁止・指示・命令しか発せない人。

 

あとは、一般的なマナーがない人は、在宅来ないほうがいいです。

 

世間一般からみて非常識な人は、在宅向きではないと思います。

看護師の常識は、世間の非常識ですからね。

一和多

そういう意味で、坪内さんいろんな経験をされてきた上で、

「在宅は向いている」

って思われたと思うのですが、

自分で考えられる人が合っているという感じでしょうか?

坪内さん

そうですね。

 

書に学び、人に学びが大いに有りな世界なんだな、って思っています。

 

私が夜な夜な飲んでいる理由も、その一つなんですけどね。(笑)

一和多

訪問看護に挑戦する人は、飲んで揉まれろと。

坪内さん

そうそうそう、ほんとそう思いますね。

 

友達とばっかりと飲まないで、一人でポンと飲み行くくらいの勇気。

取材を終えて

一和多

「おばあちゃんの原宿」としても有名な、「巣鴨地蔵通り商店街」のすぐ目の前に位置する、おんびっと訪問看護ステーション。 

 

風通しがよく、開放的な事務所は、小さなお子さんがいるスタッフのための遊具スペースや、個人練習のためのピアノが置いてあるなど、

そこで働く人が、気持ち良く等身大でいられる環境になっています。

 

代表兼管理者である坪内さんは、いくつもの訪問看護ステーションでの勤務経験・管理者経験に加えて、

他所のステーションでの経営コンサルティングもされており、訪問看護ステーション運営に対する、確かな理念と経験が感じられました

 

 「訪問看護は、書に学び、人に学ぶことが大いに活きる世界」

だと坪内さんは言います。

様々な生き方や価値観を受容していかなければならない訪問看護において、

人との触れ合いや出逢いを大切にされてきた坪内さんから、学ぶことは多いのではないでしょうか。

取材・文章:一和多義隆

事業所情報

事業所名 おんびっと訪問看護ステーション
運営会社 おんびっと株式会社
所在地 東京都豊島区巣鴨2-11-5 巣鴨第一ビル7F
最寄り駅 JR山手線、都営地下鉄三田線「巣鴨」駅 徒歩5分
在籍人数 在籍人数:看護師6名(看護師:常勤2名・非常勤4名)
従業員の平均年齢 従業員の平均年齢: 30代半ば

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