ふんわりとたどり着いた訪問看護
訪問看護はハードルが高い?
よろしくお願いします。
あの~…。
はい?
他の管理者さんのインタビュー記事を読ませて頂いて、皆さんしっかりした志を持たれて訪問看護に取り組まれていたのですが、私はそういった話があまり出せそうになく…。
大丈夫でしょうか?(汗)
いえいえ、志高くないといけない!ってことではないので、ありのままの荒井さんでお話をして頂ければ大丈夫です(笑)。
在宅未経験の方には、訪問看護に対して
「私にはハードルが高いな…」
と考えられている方も多いので、自然体な感じでお話頂くのも良いかもしれないです。
そうだと良いのですが…。
20代の若手看護師さんや子育て中のママさん看護師さん等、
スタッフの方々は、荒井さんの管理をされているこちらの事業所に魅力を感じて、しっかりと定着されているのですから、大丈夫ですよ。
そうですね。
改めて、よろしくお願い致します。
ゆるやかにしっかりと積み重ねてきた看護師としてのキャリア
荒井さんのご経歴を教えて頂いてもよろしいですか?
はい。
出身が新潟で、埼玉の看護専門学校を卒業後、そのまま系列の大学病院の血液内科に入職をしました。
大学病院もやり甲斐があって楽しかったのですが、結婚と主人の転勤を機に退職。
主人が転職をしたことを機に転勤がなくなったので、それからは千葉県市川市に住むようになって、もう20年近くとなります。
市川市への転居後は、どのようなお仕事をされていたのですか?
複合型の介護施設ですね。
私は、デイサービスの看護師からスタートして、その後はグループホームの管理者をしておりました。
計10年近く在籍したのですが、グループホームでの勤務期間の方が長かったです。
グループホームでも、管理業務を経験されていたのですね!
ちなみに、施設に入職をされる際、病院に就職をするという選択肢はなかったのですか?
その頃は、ちょうど子どもが小学校に上がったくらいのタイミングでしたので、やはり病院での夜勤は難しいだろうな、と考えました。
この辺は、都内で施設に入れなかった方が流れてくるエリアということもあり、施設自体も多かったので、働き方の融通がきく、施設看護を選んだといった形でしたね。
施設で10年間勤務をされた後、現在の訪問看護ステーションに転職をされたのですか?
そうです。
病院を退職した時と同じく、施設にも特に不満はなかったのですが、ちょうど仲の良かったスタッフが辞めていくタイミングだったので、
「もう10年は働いたし私も新しいところで働いてみようかな?」
くらいの気持ちでの転職でした(笑)。
良い意味でのゆるい感じですね(笑)。
こちらの訪問看護ステーションは、立ち上げ時からの参画だったと伺っておりますが、なぜこちらを選ばれたのですか?
その時、介護認定審査員をさせて頂いていて、そこでの活動で、医師や介護士など色々な専門職の方と知り合う中で、弊社代表の桑畑を紹介されたんですね。
代表の桑畑も看護師で、船橋近くのエリアで長く訪問看護をやっていた人間でした。
ちょうど訪問看護ステーションを立ち上げる際、管理者候補となるスタッフを探していた時に、私を紹介された、といった出会いでした。
管理者を、桑畑さんではなく、荒井さんがされたことには、何か理由があったのですか?
訪問看護ステーションの立ち上げ時から、タイミングをみて、ケアマネ事業所も立ち上げる予定だったので、桑畑はそちらの担当をしながら、訪問看護をサポートしていくといった体制を想定していたんですよ。
そうなのですね!
荒井さんにとって、はじめての訪問看護を管理者からスタートされるにあたって、近隣地域で訪問看護を長くされていた桑畑さんに相談できる環境は、有難かったのではないですか?
そうですね…何も心配はありませんでした(笑)。
えっ(笑)。
私の場合は、施設での管理者や、介護認定審査員をする中で、在宅での働き方や流れは、何となくイメージができていたので、特に抵抗感もなく、訪問の現場に入ってはいけたんですよ。
でも、立ち上げ時の準備や役所申請事項など、面倒な手続き等は桑畑が担当をしていたので、その点の心配もしなくて良かったのは心強かったです(笑)。
利用者さんとしっかり向き合える規模感と柔軟な対応を
ここからは、アムス訪問看護ステーションさんについてお伺いをさせて下さい。
まず、訪問エリアとなる船橋市近辺の利用者さんは、どのような方が多いですか?
地区の高齢者割合等の正確なデータはわからないのですが、
私の体感としては、ご家族と住まわれている方は少なく、独居もしくは高齢者のご夫婦が多いのかな? と感じています。
代表の桑畑さんとは、
「うちは、こういった訪問看護ステーションを目指していこう!」
というお話はされますか?
「柔軟な対応のできる」ステーション運営は、心掛けていますね。
うちは、大きな会社ではなく、個人運営の訪問看護ステーションなので、常に利用者さんニーズに合わせて動いていけるようにしたいなと。
収益最優先での動き方ではない、って感じですかね?
例えば、利用者さんから相談があったら、訪問外でもちょっと顔を出してみたり?
そうそう。そんな感じですね。
なるほど。
逆に、事業所の課題点みたいなものはありますか?
これも先程の話でいう「柔軟さ」につながるのですが、「緩さ」…ですかね(笑)。
うちのステーションは、基本的に新規のご依頼は断らないのですが、オンコールはほぼ私ひとりでとっていますし、人員の余力がキツキツになるような働き方をしていないので、現場への負荷の大きい重症度の高い利用者さんを、一気に受けることは難しいです。
良くも悪くも、カッチリしていない、という感じですかね。
ところで、「常勤もオンコールを持たない」といった事業所は少ないかな、と思うのですが、なぜそのような体制を?
今の規模感であれば、私ひとりで事足りるんですよね。
スタッフ数として、あと若干名は増やしていきたいと考えているのですが、今後もそれ以上の大規模化は考えていないので、この体制は続けていく予定です。
やはり、利用者さん一人ひとりを把握できる規模感の限界が、これくらいなのかな? といった感じがしていて。
無理な拡大は目指さずに、目の届く範囲・手の届く範囲での規模感に留めることも、訪問看護ステーションを運営するうえでの、1つの考え方なのかもしれないですね。
はい。
ただ、繰り返しにはなりますが、現在よりも若干は人員を増やしていくつもりですよ(笑)。
今度産休に入るスタッフがいるのですが、
そういった妊娠や出産、保育園の問題まで考えると、
スタッフが長期で休んだり戻ってきたりできる、何かあった時にお休みの融通をしてあげることができる十分な環境を用意するためには、
もう少し人員を増やしていくことは必要だな、と感じています。
信頼が生んだ、「在宅」という選択
荒井さんにとって、在宅での印象深かった利用者さんのエピソードを教えて頂けますか?
70代前半の男性で、末期の肺がんだった利用者さんですね。
会社経営をされている裕福なご家庭で、奥様、息子さん夫婦、お孫さんと暮らされていたのですが、ほぼ奥様がお一人で介護をされているご家庭でした。
緩和病棟からご自宅に戻られる際に、ソーシャルワーカーさんの勧めで私達が入ることになったのですが、最初のころ奥様は、
「看護師さんが家にきて何をするの?」
「最期は病院で看取りたい」
といった考えだったので、往診の先生も入れないで、自宅から病院への通いをしていたんですね。
それが段々と病状が進んでいくにつれて、通院も困難になっていき、最終的には、ご主人自身の希望もあって、
「最期は家で」
という選択をされました。
その決断をされる時に、奥様から、
「荒井さん達が来てくれるのなら、家で看取ります」
と言ってくださったのがとても印象的でした。
当初、奥様はご自宅で看取ることには、反対をされていたのですか?
そうですね。
訪問看護が入ったばかりの頃は、
「自分は家では絶対に看取れない」
と仰っていたので。
最期、お亡くなりになる時は、どのような様子で?
夜中に緊急コールで呼ばれ、その時はまだ呼吸があったんですね。
奥様に、現在の呼吸の状態を説明して、
「今後こうなったらまた呼んでくださいね」
と案内をして一回帰り、それから再度のコールを受けた時に、ご主人はお亡くなりになりました。
奥様から、
「本当に荒井さんの言う通りだったわ。最後までありがとうございました。」
と言って頂けたことが、とても嬉しかったことを、今でも鮮明に覚えています。
荒井さんをはじめとした、訪問看護師のフォローがあったからこそ、奥様も安心して、ご自宅でご主人を看ていくことができたのでしょうね。
訪問看護師に求められる臨機応変さ
最後に、大学病院、施設、訪問看護を経験されてきた荒井さんからみた、
訪問看護での働き方についてメッセージを頂ければと思います。
まず、荒井さんご自身としては、どこの働き方が自分に合っていたと思いますか?
う~~~ん…。
私としてはどこも楽しめましたし、どこも嫌になって転職している訳ではないんですよね。
主人からもよく、「どこでも適応できる人間」と言われています(笑)。
たしかにそんな感じは受けます(笑)。
では、荒井さんの主観で、どのような方が訪問看護に向いていると思いますか?
臨機応変な対応ができる方ですかね。
訪問看護では、色々な利用者さんを看ていくうえで、様々な家庭観・価値観と触れ合っていくことになるんですね。
その中で、利用者さんの尊厳や生き方、在宅での生活を支えていくには、
自分の考えに固執することなく、臨機応変な対応、柔軟な考え方ができることが、とても大切なんです。
病棟での臨床経験はもちろん、社会人としての経験、主婦としての経験、子育ての経験、介護の経験など、
様々な人生経験が活きる場が、訪問看護だと思うのですが、
自身の経験だけにとらわれることなく、色々な方の生活に触れ、色々な考えを吸収していく必要があるな、と常々感じます。
看護師としてだけではなく、自分自身も人として大きく成長できる仕事だと思いますよ。
本日はありがとうございました。
取材を終えて
船橋市と市川市の境に事業所を構えて7年目となる、アムス訪問看護ステーション。
近隣エリアで長年訪問看護をされてきた代表の桑畑さんと、
大学病院・施設・介護認定審査員と幅広い経験を持つ管理者の荒井さんのお二人で切り盛りをされてきた、
良い意味での程よい規模感を保った安定感のある事業所だと思います。
インタビューを読んで頂ければ分かる通り、管理者の荒井さんのキャリアは、明確なキャリラプランや看護師としての課題感によって意思決定をしていることはなく、その時々のご家庭の状況やご縁に導かれて、ふんわりと決めてこられている印象です。
一歩踏み出すまでのハードルが高くなりがちな在宅・訪問看護だからこそ、荒井さんのように軽やかな気持ちで、検討してみて頂けると嬉しいです!
取材・文章:一和多義隆
事業所情報
事業所名 | アムス訪問看護ステーション |
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運営会社 | 株式会社AMS |
所在地 | 千葉県船橋市西船5-20-1 ア-バンハイツ梨本103 |
最寄り駅 | 総武線・東西線「西船橋」駅(徒歩8分)、京成本線「京成西船」駅(徒歩6分) |
在籍人数 | 7名(看護師:常勤3名・非常勤4名) |
従業員の平均年齢 | 20~50代の幅広い年齢のスタッフが在籍 |
ステーション詳細 | » より詳細なステーション情報を見る |
本日は、船橋市内で訪問看護ステーションの開設をされて7年目となる、アムス訪問看護ステーションの管理者、荒井さんからお話をお伺い致します。
よろしくお願い致します!