訪問着はデニムとエプロン
インタビュー先の事業所とご担当者様
萩原 麻希さん 看護部長、管理者
訪問看護ステーションリリフル
東京都品川区
タワーマンション連なる港区の訪問看護ステーション
よろしくお願いします!
こちらの事務所の近くは、有名企業の本社や、綺麗なタワーマンションが立ち並んでおりましたが、このエリアに住まわれている方ですと、やはり裕福な方が多い?
そうですね~。
ただ、貧富の差の激しさも感じますよ。
タワマンと都営住宅の生保エリアが、隣同士にあったりして。
なるほど…。
お金がある方で言えば、在宅以外にも色々と選択肢があるかと思うのですが、あえて在宅を選ばれている方って、どんな理由?
年代的なところの価値観があると思う。
ご高齢の年代の方って、施設に入ることへの抵抗感を持たれている方も多いように感じます。
あとは、家族は一緒に暮らして、年寄りは家族が看るもんだ、って感じの方も。
サザエさん一家的な?
そうそうそう(笑)。
訪看、未経験者にも手厚いフォローを効率よく。
リリフルさんでは、私服にエプロンで訪問をされるんですね。
デニムで訪問することもあるとか?
ありますね~。
お家によっては、訪問看護師が入っていることを知られたくない、
という方もおりますし、
あとは生活の中に入っていくという中で、
より生活に近い服装で訪問をするようにしています。
お家に入ってから、エプロンをつけてるんですね。
そうですそうです。
ご近所さんからみたら、
やたら若い人が出入りしているな、と見えちゃうますね。
そうですね(笑)。
あとは、自費の単発も受けているので、
入院中の方の付き添いで結婚式に付き添ったりします。
そういう時はスーツで伺ったりもします。
TPOに合わせて、訪問着は変わってきますね。
こちらでは、自費での訪問看護も多く受け入れているとのことですが、どれくらいの割合で受けているんです?
その時々によるんですよね。
1日2時間毎日入っているお家もありましたし、
今ですとリハビリで毎日入ることもあるし、
単発での付き添いのご依頼もある。
レスパイトとか?
外泊だけど、CVが入ったままなので、夜だけ点滴入れたりとか、
とにかく心配なので、看に来て欲しいとか。
あと、うちはヘルパー部門とリハビリ部門もあるので、
そちらとの抱き合わせ、という形で入ることもあります。
自費を使う方って、どのような方が多いですか?
経済的に余裕がある方ですね~。
単発ですと、最期に短時間だけ外出したい、
といった依頼もあるのですが、
長期・定期で入る時は、経済的に余力のある方になっちゃいますね。
こちらは、働き方として、直行直帰OKにしているのですよね?
そうです。
遠方に住んでいる方や、子育て中の方もいるので、働く側にとっては、良い働き方だろうなと思います。
ただ、その分、情報共有が不十分になってしまったり、
みんなで集まってミーティングをする機会が少ない、というデメリットもあるので、
常勤が、個別にそのスタッフに会いにいったり、メールで情報共有したりとか、そんな感じでフォローはしていますね。
訪問看護がはじめてというスタッフは、顔を合わす機会が少ないことを、不安視されたりしないのですか?
うちは、未経験者の方が多いのですが、訪問前のオリエンテーションを手厚くしていくことで、そういった不安へのフォローはしていますね。
オリエンテーションの段階で、その方の経歴やキャラクターを総合的に判断して、見合う訪問案件に出てもらっています。
あと、最初は同行訪問からスタートしていくので、特に○回までと、同行訪問の期間を設けることなく、本人が慣れるまでフォローはしていきますね。
ご本人が未経験の症例に関しても、フォローしている?
そうですね。
訪問看護では、小児から老年まで受けているので、必要な知識が幅広いです。
その時々の案件に合わせた資料を提供したり、マンツーマンでのフォローアップのために、会いにいったりしています。
萩原さんが会いに行く?
そうそう。
事業所ではなく、外のカフェとかで。
わざわざ来てもらうのも、時間がもったいないですしね。
なるほど合理的だ…。
訪問後の情報共有やフォローは、どのように?
毎回の訪問毎に報告はもらうようにするので、その都度、私から報告をしたり、
その場その場での振り返りと共有は、やっていますね。
管理者の萩原さんが、全体の情報を集約して、必要に応じて、それを現場に降ろしている感じですね!
ちなみに、萩原さんご自身も訪問は出られてる?
はい。
最低でも、全体の1/3は訪問へ出るようにしています。
スタッフを信頼してないわけじゃないのですが、
実際に現場で、自分の目で見てみないとわからないこともありますし、
利用者さんにお顔をみせておかないと、いざという時に、対応がしづらくなってしまうので。
「あいつは、なかなか顔を出さないな!」とか(笑)。
(笑)。
幅広い現場を経験した後、伸びしろを感じた訪問看護へ。
萩原さんのご出身は?
出身は群馬です。
大学から、女子医に出てきました。
救命・ICUで1年働いた後、たまたま誘われて大学院に入りました。
その後、そのまま慶應病院に移りました。
慶應でも、ICUで6年間でした。
救急が長いのですねー。
はい。
それで疲れちゃって、病院を退職しました。
夜、寝たいなーと(笑)。
その後はフリーターやろうと思ってたんですが、
ほっといても声がかかるんですよね。
実習指導もやりましたし、老人ホーム行ったりして。
その中のバイトの1つで入った訪問看護ステーションが、在宅に進んだキッカケですね。
バイトで訪問看護をはじめて、その後、常勤に切り替えていった?
そうですね。
漠然とですが、訪問看護をやってみて、
「伸びしろのある業界だ」と感じたんですよね。
これから面白いことが起こる業界なのだろうな、と。
私は本当にクリティカル領域の知識しかなかったので、
新しい知識を身につけたいと思った時に、発展途上の在宅看護が、魅力的に映ったんですよね。
その後は、たまたま職場で知り合った(代表の)玉木さんと意気投合して、
そのまま一緒にリリフルを起業した、という経歴ですね。
救命しか経験がなかったとのことですが、訪問看護に移ってみて、どうでしたか?
最初はやはりとまどいましたね。
ICUですと医療が最優先になりますし、
意識のない患者さんが多かったので、
じっくり関わって、生活のことを考えた看護はできていなかった。
在宅にいってみて、患者さんたちって、こんなに色々な想いがあるんだな、と思うようになりましたね。
私は大学病院だったので特に。
退院する期間というものも決まっていますし、
関われる時間も限られてましたので。
病棟の経験で、在宅に役立ったものはありますか?
重症の患者をずっと看ていたので、
急変の対応に落ち着いて向き合えるのは、助かってますね。
あと、ご家族からも、重症な方を看てきた経験を話すと、
安心して任せられると信頼してもらえる。
逆に、苦戦したところは?
医学的にはとか、
いまの大学病院ではこれが最先端、
というものがあったとしても、
金銭的な理由や、ご家族の考えに沿わない時は、
選択肢が狭まることがあるんですね。
お金であれば、のっぴきならない方もいるでしょうしね。
難しいところですね。
そうですね~。
看取ったあとの家族との交流。社会との接点になった訪問。
印象深かった、利用者さんとのエピソードをお願いします。
うちの会社を立ち上げて、一番最初の利用者さんが、自費で、毎日訪問をする案件だったんですね。
利用者さんは、70代後半のお母さんで、キーパーソンは息子さん。
お母さんは、人工呼吸器をついていて、褥瘡もついていたので、1日2回の処置が必要。
夜も、吸引などで伺う必要があって、それを息子さんがすることが難しいので、私たちが。
自費で毎日訪問って、本当にお金のあるお家だったのですね。
お父さんが、すごく財を成した方だったようですね。
息子さんは、その財産で生活をされていて、働いたこともない方でした。
息子さんは、お母さんを大好きで、若干女性として見ているというか。
例えば、処置するにあたって肌がみえてると、照れちゃうんですね。
恥ずかしくて見れないって感じで。
オムツ交換とかもできないんですよね。
そんなの絶対に見れないって感じで。
訪問では、どのようなケアをおこなっていた?
褥瘡が深かったので、特別指示書がでてました。
それが終わってからは、医療保険。
医療保険の一時間枠では、全部は絶対に終わらなくて、
褥瘡処置してお通じして吸引して、で終わってしまうので、
私たちはプラスαの清潔ケアだったり、
息子さんへの指導を、懇切丁寧にやっていました。
彼は、処方箋をもって薬局に行くとか、
これを買いに行くとか、そういう行動も難しい人だった。
フルマネージメントでしたね。
訪問が2年近く続いてから、お亡くなりになって。
その後、息子さんは、未だに私たちのことをとても信頼してくれて、
彼の生活での話し相手となっていましたので。
家からほとんど出ない方で、私たちしか社会との接点がなかった。
お母さんが亡くなった後が心配だったのですが、ちょこちょこ電話したりとか、
亡くなった直後は、何度か会いに行って。
今でも、季節季節で連絡がきたり、お中元が届いたり。
この間も、事務所に遊びに来てくれたりして。
私たちとの関係性が切れることで、
新しい人生が開かれていく人もいるのですが、
彼の場合は、社会との交流がなくなってしまう可能性があったので、
人として外に出て、健康的な生活を送るのに、
うちが役立っているのであれば良いな、と思ってる。
利用者さんは、息子さんみたいですね。
そうなんですよ。
最初は、俺のために訪問してくれ、と言っていて。
ただ、君は健康だから必要ないよ、と(笑)。
でも、引きこもりにならずに良かったなと。
生きがいを失って自暴自棄にならないか、心配だったのですが。
ちなみに、お中元ってどんなものだったんですか?
紅茶とか。
どっかにお出かけした、という電話がかかってきて。
お出かけしたから、リリフルのみんなに食べてもらおうと思って、
このお店のお菓子を買って、送ってくれたんですね。
御礼の電話をしたら、それ以来、このお店の品がやたらと届くようになって(笑)。
本人としては、それが救いになってるんでしょうね。
贈り物をして、ありがとうと言ってもらえて。
本当は、おおっぴらに受け取ってしまってはいけない、とわかっているのですけどね。
私の誕生日とかも覚えているんですよ。
花束とか贈られちゃって(笑)。
医療者の視点と生活者の視点を大切に。
訪問看護を検討されている方に向けた、メッセージをお願いします。
興味があったらとりあえずやってみたら? かな(笑)。
もう一声くださいよ(笑)。
楽しいと思いますけどね~。
あまり深い言葉がでてこなくて恐縮なのですが。
気負わずにやってみて、駄目だったら、病院に戻るでもどうにもなるので。
では、聞き方を変えます(笑)。
これから訪問看護に挑戦をしたいと考えている方に向けて、
萩原さんから見た、病院と在宅での働き方の違いで、
ここは頭に入れておいた方が良いよ、って点はありますか?
う~~~ん…。
在宅って、病院と違って、新しい知識とか自然と入ってこないんですね。
自分から勉強会に行かないといけないですし、在宅ですと、勉強会の知識自体が古いこともあります。
自分自身でも情報収集して、最新の知識をキャッチアップしていかないといけないです。
その上で、この人の生活には、どの情報がマッチするのか考えていく。
医療だけを優先する訳にも、生活だけを優先する訳にもいかないので。
お話していて、萩原さんは、その辺のバランス感覚がすごく良い方なんだろうな、と感じますね。
お上手!(笑)
医療者としての視点と、生活を看る視点とのバランスって、
教えてできることではないので、その人の人生経験やセンスに寄ってきてしまいますね。
そうなんですよね…。
まぁ、やってみないとわからないことは多いので、悩み過ぎず、気負わず、まずはやってみることをオススメします(笑)。
ありがとうございました。
取材を終えて
高層マンションが立ち並ぶ、品川区内のマンションの一室に事業所を構える、リリフル訪問看護ステーション。
今回インタビューに答えて頂いた萩原さんや、一般企業も経験をされている代表であり看護師の玉木さんも、
どちらも考え方は、非常に合理的かつ経営的。
訪問看護ステーションの安定した運営をしていく上で、必要不可欠となる売上確保の面に向き合いながら、
働くスタッフへ給与としてしっかりと還元していこう、無駄のない効率的な働き方をつくっていこう、
といった意識を強く持ち合わせていることが、よく伝わりました。
いわゆる「一般的な」訪問看護ステーションをイメージされている方には、驚かれるであろう点は多いのですが、
〈まだ小さな子どもがいて働き方の制限がある方〉
〈しっかり訪問をまわってお給与につなげたい方〉
〈直行直帰での柔軟な働き方を希望する方〉
等々、「こういった働き方を探していました!」という方は、案外多いのではないかな?と思います。
取材・文章:一和多義隆
事業所情報
事業所名 | 訪問看護ステーションリリフル |
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運営会社 | 株式会社リリフル |
所在地 | 東京都品川区北品川5-12-1 フラワー御殿山ハイツ503 |
最寄り駅 | JR山手線「大崎」駅 徒歩12分 / 京急本線「北品川」駅 徒歩10分 |
在籍人数 | 看護師14名(看護師:常勤4名・非常勤10名) |
従業員の平均年齢 | 30代半ば |
本日は品川区・港区での保険訪問をメインとしつつ、同時に幅広いエリアでの自費訪問も受けられている、リリフル訪問看護ステーション・管理者の、萩原さんにインタビューをさせて頂きます。
よろしくお願いします!