その人らしく生きられる場をつくりたい – 地域で働く看護師のリレーブログ

[記事公開日]2020/09/01  [最終更新日]

訪問看護や在宅医療にかかわる方々から、実際の現場の様子や関わってみて感じた率直な想いを寄せていただきました。バトン形式で不定期でお送りいます。

今回寄稿いたただいたのは、この方!

関口 優樹(せきぐち ゆうき)さん

2018年に東京医療保健大学看護学部を卒業後、東京都江戸川区にあるウィル訪問看護ステーション江戸川に就職。学生時代から地域活動やインクルーシブに関心があり、現在も江戸川区を中心に認知症サポーター養成講座などを行っている。

 

こんにちは。現在、江戸川区で訪問看護師をしている関口です。私は新卒で現在の職場に入職し、今年の4月で3年目になります。訪問看護師をしながら、働いている地域でコミュニティナース的な活動も行っているので、そちらも合わせてお話しできればと思っています。

まずは、私が新卒で訪問看護師になった理由は大きく3つあります。

①在宅では、多様な側面から対象を捉える事ができる。アプローチ方法も多様にある。

在宅では“患者さん”としてのその人だけではなく、さまざまな顔を持つその人を見ることができると感じています。奥さんにとっての優しい旦那さんだったり、仕事ばかりやってきた仕事人だったり、趣味を謳歌して友人の多い人だったり、本当にたくさんの側面からその人を捉えることができます。これは、生活が見えるからこそだと思います。病院にいると、病気や障害を抱えたその人という側面が強く、その人自身がどんな人なのか、何を大切にしたくて、どんな風に生きたい人なのかが見えづらいと感じていました。そのため、在宅の現場でその人を多面的に捉えながら、本当にその人のための看護をやりたいと思ったことが一つ目の理由です。さらに地域における社会資源は多様であることから、利用者さんにとっての最善を模索しながら追求できると思いました。

②正解ではなく最善を考えたい

学生時代に今働いている職場に見学に来た際、同行していた看護師の先輩から言われた言葉が印象的で現在の職場への入職を決意しました。それは「医療における正解がその人にとっての最善とは限らない。ただ患者さんの選択が最善とも限らない。」と。最初は頭の中が「???」でしたが、最近は少し腑に落ちてきています。患者さんは、医療の知識が充分とは限らず選択肢が限られてくるときがあります。その中で選ぶ最善は、本当にその人のニーズを満たしているとも限りません。しかし、医療的に見た最善、例えば最後まで治療をし続けることがその人において最善とも限りません。何が正解なのか分からない中で、患者さんが何を大切にしたくて、何を不安に思っているのか、対話を通して一緒に揺らぎながら併走したいというのが私の大切にしたい想いです。そのなかで、本当にその人のためになる看護ができるのではないかと今も思っています。

③訪問看護師が増えることで自宅に帰るという選択ができる社会にしたい

もう一つは、社会的な需要です。自宅で最期を迎えたいという希望が5割超えているのに対し、日本の訪問看護師は看護師総数の4%(平成30年衛生行政報告)。また、平均年齢は約45歳と言われており若手が圧倒的に少ないのが現状です。一方で訪問看護師をやりたい人は、看護協会の調査でも60%いるらしいのです。(看護協会Newsrelease)

社会的需要があり、やりたい人が多いのに対し、実際にやっている人が少ないということを知り、私が一歩踏み出すことで誰かの勇気になればいいなと思いました。

現場で感じた違和感と向き合う

実際に2年間働いてみて、考え方や大切にしたいことは全くぶれていません。ただ、現場に出てから違和感に遭遇することは何度かありました。例えば、認知症だから危ないので外出はしてはいけないし、火は使わないなどは、私が最初に出会った違和感でした。

病気や障害があるから、やってはいけないことなんて存在しないと思っています。もちろん難しいことはありますし、危険を伴うこともあります。それでも実行するかしないかは、本人が決めることだと思います。医療者や家族は時に相手の意思決定のボーダーラインを悠々と越えていくなと感じています。本人の人生の責任をその人が担えるようになったらいいのにな、と常々感じています。

上記エピソードがあり、認知症に対する理解と認知症の人が活躍できる場を創ろうと思いました。最初は認知症の人が働く『注文を間違える料理店』をモデルとした、『きまぐれ定食屋』を開催しました。その後、子供向けに認知症サポーター養成講座を定期的に開催しています。

一般的な認知症サポーター養成講座は講義のみですが、私たちが行っているものは地域の高齢者の方を招き、一緒に買い物、調理、食事を行います。その人の得意なことを活かしながら、認知症のおばあちゃんが子供たちに野菜の切り方を教えたりします。自然な関わりの中で、認知症について学び、さらに、認知症の方も役割や居場所を得るという機会になっています。

他にも、江戸川区を中心にその人の特技や好きなことで地域に出向かう『パーソナル屋台』の作成や、車椅子で街を歩き、車椅子体験、街のバリアフリー現状を知るという街歩きイベントも検討中です。訪問看護だけでなく、その人がその人らしく生きることのできる場や機会を、コロナが落ち着いたら実行に移していきたいと思っています。訪問看護師として一人の利用者さんと向き合いながら、3年目はもう少し広い視野で地域を見つめていきたいと思います。どうぞ、江戸川区に遊びに来てください。

そして、訪問看護や地域活動に関心のある方は、ぜひチャレンジしていただければと思います。

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