チームで支える終末期ケア
新任管理者の不安と支え合う文化
はい、よろしくお願いします!
今回は、人事異動の兼ね合いも等もあり、赤羽さんに管理職の白羽の矢が立ったと伺っていますが、管理職のお声がけがかかった時は、どのようなお気持ちでしたか??
いや~~~、もう断りたい一心でしたね。
どうやって断ろうかと考えていました(笑)。
そんな(笑)。
まぁ管理職になると、必然的に現場以外の業務も多くなりますし、それが嫌で管理者を断るという方も多いですね。
ちなみに、赤羽さんのご家族からは、管理者をやることについて、どのようなご意見だったのですか?
それが、夫に相談をしたら、「自分でやれると思ったのならやってみれば?」とあっさりとしたもので…(笑)。
夫も、訪問看護の仕事内容は何となく知っていますし、中間管理職の辛さも見てきているので、もっと反対するかと思っていたら、まぁ、あっさりとしたものでしたね。
中間管理職の辛さ……(苦笑)。
ただ、先ほどから事業所内の様子をみていて、メンバーの雰囲気やチームワークは良さそうだな? とすごく感じますけどね??
そうですね! チームワークはすごく良いです。
素直で気持ちの良い性格のメンバーが揃っていて、スタッフ同士が支え合う文化ができているので、
それがあったから、私も管理者を受けられたのかなと思っています。
それが何よりですね!
これからより詳しく、こちらの事業所の特徴についてお伺いさせて下さい!!
地域を支える中核的な医療・介護の連携体制
まず、こちらのエリアで訪問看護をする上での、エリアの特徴からお伺いさせて下さい!
今日、大泉学園の駅前から歩いてきたのですが、駅前も来る途中も、小さな子どもを連れた子育て世帯が多いのかな? と感じました。
このエリアに住まわれている方としては、どのような方が多いですか??
そうですね。
附属の小中学校もあるし、幼稚園もあるし、若い子育て世帯は住みやすいエリアだと思いますよ。
あと、訪問をしていて感じるのは、代々このエリアに暮らされている、地主さんのような方も多い印象ですね。
移り住んできたファミリー世帯、代々暮らされている二世帯・三世帯のお家、どこのエリアでもいる高齢者独居のお宅など、満遍なく様々なタイプのご家庭が住んでいる地域なのかな、と。
都心からのアクセスも良く、駅前も綺麗に再開発されていて、住みやすい地域なのでしょうね。
ちなみに、こちらのメンバーにも、子育て中のママさんはいますか?
はい、うちは子育て中のスタッフが多いですよ~。
中には、まだ未就学児の子どもを抱えながら働いているメンバーもいますね。
何か事業所としての催しをする際は、子連れOKとしていて、
もちろん仕事と家庭との適度な線引きはするのですが、スタッフ同士が家庭の事情を何となくでも把握しているので、
そこから自然とサポートし合う空気は生まれているのかな? と思います。
「あそこの子どもはまだ小さいから仕方ないよね」
とか、
「うちの子どもはだいぶ手が離れたから次は私がサポートに入ろう」
とか、そういった感じですかね。
訪問看護って、ママさん看護師が多いので、業界全体としてそういった雰囲気はあるのですが、
これって病棟でバリバリ働いてきた看護師さんには、あまりイメージがしづらい感じかもしれないですよね。(苦笑)
こちらの訪問看護ステーションは、すぐ近くに、同法人が運営する病院もありますよね。
病院の前を通りながら、
「新しくて綺麗な病院だな~」
と思いました。
ありがとうございます!
実はこの事業所も、元々は病院の医局として使われていた場所で、それが病院の改装を機に院内に移ったんです。
こちらも施設自体は、まだ新しい感じですよ。
そうなんですね!
これだけ病院とステーションの距離が近くて、働かれるうえでのメリットは感じますか?
なんかもう、本当に色々とありますね!
まず、利用者さんのことで何かあったらすぐに相談に行けますし、カンファレンスなんかでも気軽に行けるのは大きいです。
あとは、医療的な相談だけではなく、生活上の問題を抱えている困難ケースでは、
ソーシャルワーカーが病院にいるので、その相談に行けるのも助かっています。
同法人のドクターやソーシャルワーカー、あとはケアマネ事業所も、近くにありますよね。
ご家族が疲れているな、と感じた時は、
「レスパイト入院もありますよ?」
と提案することもあるのですが、そういった時も、先にベッドの空き状況だけ確認しておいて、それからクリニックの先生からの紹介状の用意だったり、情報提供書の用意だったりを進めることができるので、自分でも「楽だな~」と思うことは多いです(笑)。
ちなみに、こちらの在宅部の先生は、連携はやりやすいですか??
やりやすいですよ。
先生たちもどんどん変わってきていて、在宅に興味のある若い先生もいれば、すごくベテランの先生もいて、良いバランスなのかなと思います。
やはり、法人全体として、「地域」「在宅」に理解のある文化なのでしょうね~。
保育園の子どもを抱えて、週2パートから始めた訪問看護
ここからは、赤羽さんのご経歴について、お伺いをできればと思います。
まず、ご出身はどちらですか?
時折、ちょっと関西弁っぽくなりますよね?(笑)
そう、出身は三重県なんです(笑)。
看護学校も三重県で、卒業して病院に入職をしたのですが、主人が転勤族だったので、それに合わせて熊本に行って、四国に行き、また熊本に戻って、15年ほど前に東京に出てきたという感じです。
これから先は、もうご主人の転勤の可能性は?
さすがにもうないです(笑)。
病棟は、どちらの配属だったのですか?
内科病棟や外科病棟ですかね。
あとはクリニックとか。
訪問看護を始められたのは、いつ頃から??
東京に出てきてからですね。
転居してきた家から歩いて2分くらいの場所に、うちの法人の訪問看護ステーションの看板を見つけ、
「あ、これは何か縁があるのかな?」
と感じて問い合わせたのがキッカケでした。
歩いて2分は近いですね(笑)。
訪問看護は、元々ご興味があったのですか?
そうですね。
私は、当時としてはかなり珍しく、看護学生の時から在宅に興味があったんですね。
「お宅に伺って困っている方に看護をできるってすごく素敵だな」
と。
ただその当時は、まだ訪問看護という制度自体がなくって、そこを保健所が担っている時代でした。
それから訪問看護の制度ができた後も、興味はあるけど、踏み出すタイミングがなかなか掴めなかった感じでしたね。
いよいよ、満を持しての訪問看護だったのですね。
そちらの転職時は、常勤で勤務を?
いえいえ、週2のパート勤務からでしたね。
まだ一番下の子どもが保育園に通っていたということもありましたし、
「自分に訪問看護ができるのか?」
といった不安もあったので、
まずはパート勤務から始めてみて、できるようだったら少しずつ増やしていこう、と考えていましたね。
週2パートから始めて、ついには管理者にまでなりましたね~。
そう言われるとそうですね(笑)。
長く続いたのは、やっぱり在宅が楽しかった、ってことが一番大きかったかな~。
ご利用者やご家族、地域の連携先から信頼をされるチーム看護
ここからは、赤羽さんの中で印象深かったご利用者のエピソードをお伺いさせてください。
割と最近の方ですかね…。
ガン末期の男性の方だったのですが、年齢が50近くで、奥さまとワンちゃんと一緒に暮らされている、お子さんはいないご家庭でした。
担当の先生からは、緩和ケア病棟を勧められていたのですが、ご本人の気持ちとしては、
「自宅に帰りたい」
「自宅で家族やワンちゃんと一緒にいたい」
といったことを望まれていました。
ご本人やご家族の望みを、可能な限り叶えていく方向で動いていこう、と考えていました。
すごく綺麗好きな方だったので、オムツではなく最期までトイレを使われましたし、亡くなる前日までお風呂の入浴介助もしました。
あと、家族旅行の付き添いもありましたね。
奥さまとワンちゃんと、みんなで一緒に行かれた温泉旅行。
それは、私たちとしてもすごく葛藤はあるんですね。
「身体の清潔をしなきゃ」
「管理の面を考えるとこれをしなきゃ」
「これは本人の余命幾ばくもない中で、本当に必要なものなのか?」
「提案をするなら今しかない」
とかとか。
ご本人の意向には沿ってあげたいし、本人らしい最期を過ごして欲しいけど、自分たちのやっている看護が本当に正しいのか? ってわからなくなるんです。
最終的にその方はご自宅で亡くなることができたのですが、亡くなられた後に奥さまから、
「本当に最期まで、夫の希望通りにしてくださって、ありがとうございました」
と言って頂けました。
それを聞いて私たちも、
「自分たちの看護は、間違ってなかったのかな」
と思うことができたことが印象的でしたね。
かなり深い関わり方をされたケース、といった印象でしたが、その方は最初から信頼関係はできていたのですか??
いえ、そんなことはないんですよ。
最初は、「訪問看護は要らない」と仰っているような感じでしたね。
やはり、ご年齢が若いからってこともあると思うのですが、
訪問看護という制度自体をご存知でなかったですし、
自宅に看護師が出入りしているところを、ご近所さんに見られたくない、といった思いもあったようです。
終末期ですと、訪問看護が入っていた期間はそう長くないと思うのですが、そこからよく、それだけの信頼関係を築きましたね?
訪問に入っていた期間は、ちょうど1ヶ月ほどでしたね。
緩和ケア認定の看護師がいるので、そのメンバーに相談をしながら、チームでサポートをしていきましたね。
本人が望んでいること、ご家族が望んでいること、現在の状態、各々がどのような看護をしたのか、
といったことがちゃんと共有されて、チームでの目線合わせもできていたので、
ご家族からも信頼して頂けたのだと思います。
うちは、そういったご依頼のケースは結構多いんですよ。
「もうこれ以上は病院では…」
といったケースのご依頼を急に頂いて、しかも、それが毎日の訪問が必要なような方でも、
チームのみんなで訪問を振り分けて、ちゃんと向かう看護の方向性はズラさないで動いていきます。
そういった動き方ができる点は、自分でも凄いなと思いますし、うちのステーションの強みだなと思っています。
地域のクリニックの先生やケアマネなども、こちらのステーションのそういった強みを理解しているからこそ、信頼してこちらに依頼をされるのでしょうね。
病院での管理と在宅での距離感との違い
学生時代から興味のあった在宅看護・訪問看護を始められてみて、実際の現場に入られた時の感想はいかがでしたか?
すごく楽しかったですよ!
ただ、色々な苦労があったのも事実です…(笑)。
家に入れてもらえなくて、門前払いをされたこともありますし、「声が大きい!」と怒られたこともありますし、
色々とやらかしています、私(苦笑)。
そういった勘所は、経験しながら学んでいくしかないですからねぇ…。
そうなんですよ。
だから、新人さんが入った時は必ず、
「みんな最初からベテランなわけじゃないですよ。徐々に徐々に!」
と言って、フォローしています(笑)。
こうやってお話をしていて、赤羽さんって、受け入れの良いご利用者と、そうではないご利用者の温度差が、激しそうな感じがしますね(笑)。
あははは(笑)。
そう、私やらかしちゃうんです。
何か要らないこと言っちゃって、
「やっちまったなぁ…」
っていうことは、何度もありましたね。
ただ、それでもやっぱり在宅は楽しいですし、飽きないですね。
私だと、人と話をすることが好きなので、色々なお話をしてくださることが嬉しいです。
戦争体験での苦労話をしてくださる方もいるし、子育ての話題で盛り上がる方もいます。
それだけ、ご利用者と距離を縮めていくことにも、技術は必要そうな感じはしますね。
そうですね。
最初は、抵抗感の強い方はいますし、自分自身だってそうです。
最初から、「あれもしよう」「これもしよう」と全部をやろうと思わなくて良いんです。
まずは、ご挨拶から始まって、ちょっとご自宅に足を踏み入れて、足先から徐々に触れていって、お話を聴いて…と、徐々に徐々に。
病院での治療のように、最初から完璧に管理をすることなんて、在宅では無理なので。
それで、会話を重ねていく中で、どこかで取っ掛かりのようなものがあれば、その方の興味のある話題がわかってくるので、あとはそこを引き出していくことですね。
本日は貴重なお話、ありがとうございました。
取材を終えて
練馬区「大泉学園」駅から、学芸大学附属学校方面を抜けた先に位置する、『大泉訪問看護ステーション』。
1996年開設と、訪問看護の中ではかなりの老舗となるこちらの事業所では、同法人が運営する『大泉生協病院』が隣接することや、同じ建物内にケアマネ事業所を持つこと、PT/OTメンバーも在籍していることなど、
看護のみならず、多職種と一体となって地域医療を支える中核的な存在として、存在感を発揮して示しているように感じられます。
また、その信頼感からか、地域の医療機関から、終末期のご利用者の急なご依頼が舞い込むことも多いそう。
緩和ケア認定を持つメンバーや、訪問看護のベテランメンバーたちと共に、ご利用者の望む最期を支えるケアチームの一員となることで、きっと大きなやり甲斐を感じられる職場だと思いますよ!
取材・文章:一和多義隆
事業所情報
事業所名 | 大泉訪問看護ステーション |
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運営会社 | 東京都保健生活協同組合 |
所在地 | 東京都練馬区石神井台6-9-12 |
最寄り駅 | 西武池袋線「大泉学園」駅 徒歩15分 |
在籍人数 | 常勤5名・非常勤6名、PT:2名、OT:1名 |
従業員の平均年齢 | 30~50代のスタッフが在籍 |
ステーション詳細 | » より詳細なステーション情報を見る |
本日は、東京都練馬区西部の地域医療を支える、東京保健生活協同組合の『大泉訪問看護ステーション』で、2019年4月から管理者となる、赤羽さんにインタビューをします。
よろしくお願いします。