訪問看護師のキャリア形成
[記事公開日]2021/12/21
訪問看護師として働き始めて、どうようなステップで成長していけば良いのか、どんなキャリアを積むことが出来るのか、悩む方も多いと思います。今回はラダーとキャリアに関して説明します。
訪問看護におけるステップアップとしては公益社団法人 日本看護協会が出しているラダー(https://www.nurse.or.jp/nursing/education/jissen/ladder/pdf/jissen_homon.pdf)を参照してもらうと一つの参考になると思います。「基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護実践する」というレベルⅠから「より複雑な状況において、ケアの受け手にとっての最適な手段を選択しQOLを高めるための看護を実践する」というレベルⅤの段階までレベル毎の目標、行動目標、実践例がまとめてあるので確認してみると訪問看護師としての成長がイメージしやすくなるかと思います。
しかし、上記はあくまで形としてありますが基本的に訪問看護におけるキャリアラダーを事業所としてしっかり運用して実施できているステーションが多いかというと、そうではないことが多いように感じています。(小規模な人員での運営が多い訪問看護ステーションでは、致し方ないことでもあるのですが…)。
先輩看護師に同行して学ぶほか、 個人単位での学習、それぞれの訪問看護ステーションの独自の教育システムなどに委ねられており、体系化された継続的な教育・成長機会が設けられていることは少ないです。
そのため訪問看護ステーションは病院よりも自分自身で学ぶ意識、行動をとることが求められます。
レベルⅤの段階まで進む過程でキャリアに悩むことも多いかと思いますが、大きく3つのキャリアパターンがあるかと思います。
①認定・専門看護師の資格取得をしてスペシャリストになる
訪問看護では領域対象は幅広い利用者に看護実践をしていくためその中で自分が興味関心のある領域が出てくる可能性があります。そこを強みにするために認定や専門看護師資格を取得するのも良いでしょう。スペシャリストが在籍しているステーションだということがわかれば、その分野の看護を必要としている利用者は安心して訪問を依頼することができます。また、専門性の高い知識や経験をチーム内で共有することで事業所全体の質の向上につながり、より多くの訪問看護を必要としている利用者に質の高い看護が提供できるようになります。
ステーションによっては資格取得に向けて経済的支援や勤務調整をしてくれることもあります。資格取得後はステーションの教育ポジションを任されることや、手当が出るなどキャリアとしてもメリットがあると思います。
②マネジメントスキルを高めて管理者を目指す、独立していく
臨床能力を高めることと別にマネジメントスキルを高めることで管理者として成長して組織を機能させていくことに注力するのも良いでしょう。看護師は専門職であり臨床能力を高めることへの意欲が高くても、組織人として成長することへの意欲は低い印象を受けます。
その中でマネジメントスキルが高い(もしくは高めていくことに意欲のある)看護師は、組織としてはとても貴重ですし、実際に管理者を任せられる機会も十分に期待は持てます。
その延長線上として、現場のマネージメントに加えて経営面も学んでいき、いずれは独立・開業をして自分でステーションを持つことも可能です。
③領域対象選ばずスキルを高めてジェネラリストになる
このパターンの訪問看護師が割合としては一番多いと思います。特定の領域を極めるわけでも、管理者を目指したいわけでもなく、目の前の訪問看護を必要としてくれる利用者・家族に看護を提供していきたいと考えるスタイルです。
訪問看護ステーションの中で領域特化しているステーションはごく一部なので、幅広い利用者への対応が可能なジェネラリストこそ訪問看護の中では一番必要とされているかと思います。
自分が訪問できる対象を広く浅く持ち、そこを少しずつ深くしていくことで、やりがいを持って働くことができると思います。
以上となります。
ステーションから求められるキャリアと自分自身が思い描くキャリアが一致するのが理想であり、定期的に管理者と面談をしながらすり合わせていくことが大切かと思います。
とはいえ、キャリアビジョンは流動的なもので、利用者との出会いや経験によっても変動する可能性は大いにあります。自分が進むべき方向はどちらであるのか、何を選ぶのが最適なのか、都度立ち止まりながらよくよく考えて行動していくことをオススメいたします。