訪問看護での小児看護

公開日:2021/12/21 更新日:2024/02/06
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訪問看護というと成人、高齢者を対象にするイメージがあるかもしれないですが、「医療的ケア児」を中心に在宅でも小児看護を提供する機会が増えています。病院で小児領域の経験のある訪問看護師は少なく、初めて受け持つ際にはハードルを高く感じることや、怖さを感じる方が多いのではないでしょうか?今回は小児ケースを受け持つ際に気を付けるポイントをお伝えできればと思います。

①子どもの正常なバイタルサインを知る

小児は年齢、発達によってバイタルサインの正常範囲が異なり、特に年齢が小さくなるほど予備力が弱く、少しの変化で全身状態が悪化します。そのため正常か異常かその場で判断することが求められます。また、基礎疾患やその子の特性によって正常範囲が推移したりもするため日常的なバイタルの傾向を把握しておくことも大切です。そして、異常時の対応を事前に主治医や両親とも整理することや、フローチャートを作っておくことでお互いに慌てずに対応することができます。

②家族支援

病院から在宅に移行するにあたって家族は何が困りそうか、どのように支援することが適切だろうか、必要であれば退院前カンファレンス等で病院側と在宅のスタッフ、家族で話し合うことで具体的な介入の方向性が見えてきます。また、介入後も両親が十分に休息を取れているだろうか?きょうだい児がいれば、親と過ごす時間が確保できているか?という視点を持つことも大切です。

訪問看護が導入されるからといって24時間365日看護師が子どものケアができるわけではなく、基本的には家族のみで過ごしていくことになります。そのため家族がケアの手技を獲得して、生活パターンを確立する。そして、何かトラブルがあっても家族で乗り越えることができるように支援していきましょう。

③成長・発達支援

子どもの特性に合わせて環境調整やサービス調整をして、成長発達を促していくことも訪問看護の役割の一つになります。障害があることで標準的な発達曲線とは異なる経過を辿ることも多いため、その子なりの経過を見ていくことも重要です。そして、その成長を両親と共有しながら子どもと両親が相互作用しながら愛着形成が進むような関わりをしていきます。また、子ども成長に合わせて、通所や幼稚園・保育園、小学校など地域に生活範囲が広がるように保健師や相談支援専門員も巻き込みながら多職種で支援していきましょう。

小児領域でのおすすめの参考書3選 +α

『診療報酬まるわかり 小児の入退院支援と訪問看護 実践ガイド』
(発行:へるす出版、著者:原 厚子・萩原 綾子・又村 あおい、発行日:2018年10月)
https://www.herusu-shuppan.co.jp/961-2/

高齢者と違い、小児は生まれて初めて自宅での生活を始めるケースが多いため療養環境の調整、生活パターンの確立までに時間がかかります。その中で訪問看護師として退院前から調整に入ることが多く、そのヒントとなる動き方や社会資源の調整の仕方が事例ももとに分かりやすく記載されています。

『医療受ける子どもへの上手なかかわり方』
(発行:日本看護協会出版会、著者:原田香奈、相吉恵、祖父江由紀子、発行日:2018年12月)
https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3645

医療環境における子どもと家族に心理社会的支援を提供する専門家であるチャイルドライフスペシャリスト(CLS)の資格も持つ看護師によって、療養環境の調整から発達段階に応じた関わり方、場面ごとの関わり方を分かりやすくまとめてくれています。訪問看護師になって初めて小児科を経験する方も多く、子どもに対してどのように接したら良いのか迷う方も多いと思います。この本を読んでみると関わり方のヒントが見つかると思います。

『はじめよう!おうちでできる 子どものリハビリテーション&やさしいケア』
(発行:三輪書店、監修:田村正徳(埼玉医科大学総合医療センター)、前田浩利(医療法人財団はるたか会)、著者・編集:日本小児在宅医療支援研究会:、発行日:2019年)
https://shop.miwapubl.com/products/detail/2218

日々のケアの中で必要となる実践的な知識・技術が網羅されており、観察ポイントやケアの中で意識するポイントを学ぶことができます。個人的には一番読み込んだ本であり、指導する際にも参考にしている本となります。リハビリテーションというタイトルになっていますが、小児の在宅医療に関わる全ての職種に読んでいただきたい一冊です。

(おまけ) ※東京都内の方限定※

『小児在宅医療に関するセミナー及び訪問診療同行研修』
(主催:東京都・東京都小児等在宅医療推進研修事業、運営:医療法人財団はるたか会)
https://tokyo-pediatrics.org/wp/wp-content/uploads/2020/08/b7161c80f5863f0ad643bfc60df01af0.pdf ※2021年度での応募はすでに終了

都内の訪問看護師限定になってしまいますが、こちらの研修は講師陣も豪華で小児訪問看護の概論から実際の現場で役立つ知識・技術を無料で学ぶことができる、大変おすすめの研修となっています。僕の勤めるステーションでも新人の訪問看護師には勤務調整をして積極的に参加を促しています。

以上となります。

小児に対する専門性のなさから不安に思う方も多いと思いますが、困りごとを一緒に悩み、成長を一緒に喜び、寄り添っていくそんな「関係性」による支援も小児の訪問看護には大切です。とはいっても、専門性も必要ではあるので外部のリソースも使いながら学んでいきましょう。

是非、専門性と関係性の両輪を意識して小児訪問看護を実践してみてください!

▼執筆者プロフィール

藤井 達也
地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。

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