人と人、人とまちを、ほっこりあたたかい輪でつなぎたい – 地域で働く看護師のリレーブログ
[記事公開日]2020/10/21 [最終更新日]
訪問看護や在宅医療にかかわる方々から、実際の現場の様子や関わってみて感じた率直な想いを寄せていただきました。バトン形式で不定期でお送りします。
今回寄稿いたただいたのは、この方!
佐藤 春華(さとう はるか)さん
1992年生まれ。秋田大学医学部看護学専攻卒業。東京都内の療養型病院で看護師として勤務した後、綾部市「コミュニティナース」(病院や施設ではなく、地域の中で、住民とパートナーシップを築きながら地域の健康増進を図る、いわば「新種の看護師」)として地域づくりに関わる。その後1年間は医療分野を飛び越え、京都府庁で協働コーディネーターを務める。現在は東京都内にて訪問看護師として地域住民一人一人の人生に向き合っている。
地域で働くナースの新しい形を目指して
私は看護学生時代から、終末期看護に関心を持っていました。理由は単純で、実習期間に受け持ち患者さんが亡くなった経験から、人の死の在り方について考えるようになったからでした。終末期看護に携わりたいという思いから、新卒では、東京都内の療養型病院の看護師として従事しました。
一方で、大学時代はいわゆる”まちづくり”の分野にも興味があり、病院勤務を経て、地域で働くナースの新しい形としての「コミュニティナース」という職業に就きました。コミュニティナースとは、病院や施設ではなく地域の中で、住民とパートナーシップを築きながら地域の健康増進を図る、いわば新種の看護師。私が働いていたのは、当時は縁もゆかりもなかった京都でした。まずは顔を知って頂くことからはじめ、地道にデータと生身の住民さんたちから情報を得て行きました。いかに地域住民の目線に立って考えられるか、そして地域住民さんたちにいかに医療を身近に感じてもらえるのか考え続けました。そしてそののち、”ナース”という位置付けでないところからも地域に関わってみたいと思い、1年ほど京都府庁の職員としてもお仕事をさせて頂きました。
現在の事業所との出会いは、昨年、友人の医師が主催したイベントでお手伝いをしていた時のことです。「地域と医療の架け橋をつくる」と話していた弊社代表の糟谷と意気投合し、この会社で訪問看護師として働いてみたいと思い、就職を希望しました。
そして今年の4月、コロナ禍の緊急事態宣言とともに訪問看護を始めてからもうすぐ4ヶ月となります。以前から、地域という対象や、非医療機関の仕事に携わってきたこともあり、在宅や地域に出ることへの抵抗は少なかったように思います。しかし、訪問看護師として地域で暮らす方々に関わったからこそ気づいたことはたくさんありました。
「地域と医療の懸け橋をつくる」を実践する
訪問看護師は、利用者さんの毎日の生活の中に入らせていただいて、ご本人やご家族様と一緒に過ごし方を考えます。当たり前ですが、”生活”というものは、亡くなるまでずっとずっと続いていきます。そんな継続していく生活の中に、ほんの少しでも変化をもたらせたら、どうでしょうか。今の瞬間のケアだけに着目したら、もしかしたらたった1°くらいの方向転換かもしれません。ですが、それを続けられた暁には、1ヶ月後、半年後、1年後には、いったい何°離れたところまで方向転換ができるのでしょうか。日々のケアはさりげなく地道なものかもしれませんが、生活の積み重ねの向こう側まで考えると、それは大きな影響力があるとも思えます。
そして、関わるポイントが人生フェーズの中で早い時期であるほど、その変化に角度がつけられる可能性は高く、変化のし方の選択肢も増えるのではないかとも思います。だからこそ、様々なフェーズで地域の方々と関われるように、仕掛けは老若男女用にたくさん作りたい。そのような思いから、私は弊社が運営しているカフェ事業にも関わり、カウンターに立つこともしています。
これは弊社代表の糟谷が話している「地域と医療の懸け橋をつくる」という理念にも通じる活動だと思っていて、今後も継続していきたい取り組みです。
ここで、糟谷の先日にブログにあったお言葉を拝借します。「Sync Happinessが出来た2014年から、いつか、FLAT STANDで看護師や医者がコーヒーやお酒を提供するような場をつくりたいと言い続けてきていますが、それが前進しました。
(中略)まちの人たちと関係性を持っていくことで、まちから医療を見ることが出来るようになります。僕らが大切にしていることは、1回だけの関係じゃなくて、ゆっくりと時間をかけて、関係性や距離をつくっていくこと。そうすると、医療からまちを見ていた時には見えなかった何かを感じられるようになってくると思っています。(中略)その日あった出来事やまちの人たちとお話をした内容を医療福祉と合わせて考えると、課題はたくさん出てきます。」
カフェのカウンターにいる、ただの陽気なお姉ちゃん。お客様から見えているのはそんな顔でありながら、視点や観点が看護師だったら、どんなことが出来るのか。カフェは、本来医療者が医療者として居るはずのない場。そこでは、医療者と地域住民さんという関係ではなく、シンプルに”人と人”として関わることが出来ます。その時、地域の方々はどんな言動をするのか。私はどうそこにどうアプローチ出来るのか。まだまだ模索している段階ではありますが、日々そんなことを考えながら、”ただの陽気なお姉ちゃん”としてカウンターに立っています。
地域の一人一人の声に耳を傾けること
私が生涯を通じてしたいことは、コミュニティづくりです。人と人や、人とまちを、つなぎたい。そこにできた輪は、ほっこりあったかいものにしたい。どんな状況で生まれ育った人も、「最期まで安心で幸せなコミュニティ」で生きていけるような社会ならいいな。大学生ぐらいの頃から、そう考えていました。
コミュニティを構成しているのは、環境、風土、文化…そして住民の一人一人です。コミュニティにアプローチする仕事に就き、まち全体を捉えようとすればする程、地域の一人一人の声に耳を傾けることの重要性に気付かされた気がしています。
わたしがしたいコミュニティづくりの「安心と幸せ」には、定義はありません。しかし現在の立場、つまり訪問看護師や飲食店のスタッフという立場から、何気ない一言ひとことのやりとり、地域の人々の日常の表情の中から、その方やそのまちにとっての安心と幸せってなんだろう?と、これからも模索していこうと思います。