「老い方を教えてくれた」…訪問看護師の何気ない世間話が生きる活力に

「いつ死んでもいい」と常々言っていた要支援の80代女性が「どうやって老いていけば良いか教えてもらえました」と感謝した、訪問看護師の何気ない言動とは

インタビューご協力者

伊藤 きよみ

看護師

東本町訪問看護ステーション 管理者

短期間での関わりだとしても、強く印象に残る利用者さんはいます。伊藤さんが出会ったのは、要支援の高齢のご夫婦でした。

奥さんは80代で鬱が入っていました。食事もそうめんしか食べず、常々「いつ死んでもいい」と口にしていたそうです。生きる希望や楽しみを持っていない様子でした。

そんな奥さんに、伊藤さんがしたことは特別なことではありませんでした。料理や食べることが大好きな伊藤さんは、その方をケアしていく中でご飯や料理、生活などの話を何気なくしていたんだとか。

食べることや暮らし方。日常会話の中で、単なる雑談として話すような内容です。しかしそれが、逆にその方には良かったのでしょう。その後は気持ちも前向きになり、病状も安定してきたそうです。伊藤さんの何気ない話が、「自分らしい暮らし方、生き方とは何か」と考えるきっかけになってくれたのかもしれません。

病状も安定し、訪問看護が終了になる際にはご夫婦から「伊藤さんにどうやって老いていけば良いか教えてもらえました」と言ってもらえた伊藤さん。人生の大先輩に生き方や老い方に関わるケアをできたのだろうかと驚きながらも、とても嬉しかったそうです。

その後、その奥さんは90代になってからもフィットネスに行って水中歩行やトレーニングをするまでになりました。「いくつになっても筋力はつくらしいの」と筋力アップに励んでいるんだとか。出会った時、「いつ死んでもいい」と言っていた人が自分のケアによってここまで心身ともに回復する姿を見て、逆に力をもらえたと感謝をしている伊藤さんでした。

取材・文章 : 一和多義隆

取材日 : 2017年6月23日