行政とのやり取りを通して突きつけられた、ひとりひとりと向き合う大切さ

ALSの利用者さんの代わりとなって行政とのやり取りに奮闘 行政と利用者さんの"中立"という立場では見えなかった、ひとりひとりに向き合う大切さとは

インタビューご協力者

伊藤 きよみ

看護師

東本町訪問看護ステーション 管理者

伊藤さんが訪問看護師、ケアマネージャー、そしてステーションの所長として7年間も関わったという利用者さんがいます。その方はALSを患っていました。

病状はどんどん変わっていきました。焦る気持ちを持ちながらも伊藤さんはケアだけでなく、行政とのやり取りについても一緒に動いていったそうです。本人は病気によってコミュニケーションの問題があるため、伊藤さんが何度も役所に行ったり、代行や通訳もお手伝いしたりと、利用者さんの前にある様々な壁に立ち向かっていきました。

 

しかし、行政と利用者さんとの間、いわば中立のような立場にあった伊藤さん。「あなたは一体誰の味方なんですか?」「私たちに対してどういう立場で何を支援してくれるのですか?」と面と向かって問われたんだとか。

 

“中立”という立場では足りないんだ。伊藤さんはそう強く思ったそうです。

 

その人自身に対する関わり方を大事にするとはどういうことなのか。行政とのやり取りは試練にも似た経験でしたが、そんな根本的な人との関わり方についてとても勉強になったと伊藤さんは振り返ります。

 

後日、伊藤さんがそのステーションを退職する際にはその利用者さんとご家族は「私たちはこれからどうやって生きていけば良いのかわからなくなってしまう」と言ってくれたんだとか。

 

そんな言葉をかけてもらえるほど、“人と人”いう関係で深く関わることができたんだと改めて感慨深かったそうです。その利用者さんに教えてもらった、ひとりひとりに向き合う大切さは今の伊藤さんのかけがえのない財産にもなっているんですね。

取材・文章 : 一和多義隆

取材日 : 2017年6月23日