91歳母の老衰を受け入れられない息子 訪問看護師の説得の末に…

様々な医療資源を使っていた91歳の女性利用者さん。 母の老衰を受け入れられない息子さんと延命に疑問を示す先生に対して、訪問看護師が言った説得の言葉とは?

インタビューご協力者

荻原 美智恵

看護師

自由が丘訪問看護ステーション 所長

最近、荻原さんが看ていたのは91歳の女性利用者さん。息子さんはそのお母さんのことがすごく大好きな方でした。

91歳という年齢ながら「生きよう」という意思があったという女性利用者さん。

しかし、すでに老衰を迎えていたのは明らかでした。

それでも息子さんは、
「絶対に死んだら嫌だ」
「お母さんはまだ生きる」
と言って聞かなかったんだとか。

そんな中、パーキンソン病の疑いもあったため、難病の指定もしてもらい、
床ずれもあったために皮膚科の先生に相談。

さらに「ご飯は食べたい」という本人の希望のもと、
接触回復支援職の「あいーと」も取り入れ、
食事が喉を通らなくなれば言語聴覚士さんに相談。

そのように色々な医療資源を使っていたところ、先生からは
「延命のためにそこまでやるんですか?」
と言われてしまったのだそう。

すると、
「ご家族もご本人も希望していることを助けることの何が悪いんですか?」
と萩原さん。

ご飯を食べることができ、
「美味しいからあなたも食べて」
と言うほど喜んでいた姿を見ていたからこその反論でした。

 

そして二ヶ月ほどそのような状態が続いた後、いよいよ入院しなければいけない容態に。

本人も「家に帰りたい」と希望する中、未だに老衰を受け入れられない息子さんは、
退院に難色を示していました。

そこで、荻原さんは
「病院では1日4回も吸引の必要があり、本人も嫌がっています。
もう家に帰して、必要に応じたお世話をする方が本人のためにも良いのではないですか?」
と説得。

退院後も息子さんは受け入れがたい様子でしたが、
次第にご飯も食べられなくなり、苦しそうにしている姿を見て、
「もう無理なんだな」
と感じ取っていったのだそう。

 

そして家に帰ってから10日間でお看取りをすることができました。

最期に息子さんがかけた言葉は
「お母さんもう良いよ。お父さんのところにいっていいよ」

認知症も全くない方だったため、その言葉はしっかりと聞こえていたのでしょう。

その日のお昼に息を引き取りました。

その後、娘さんとお嫁さんと共に行ったエンゼルケアでは、
本当に優しくて良いお顔をしていたお母さん。

息子さんもやりきったという満足感もあり、荻原さんに
「ありがとう」
と感謝を述べてくれたんだそうです。

その言葉を聞いて、荻原さんは
「ああ、これが私たちの仕事なんだな」
と感じました。

 

医療従事者として本人のため、家族のために何ができるのか。

先生やご家族と時にはぶつかりながらも最善の方向を探るからこそ、
利用者さんやご家族が本当に喜んでくれる瞬間に立ち会うことができるのですね。

取材・文章 : 一和多義隆

取材日 : 2017年5月2日