訪問看護での精神科看護

公開日:2021/12/21 更新日:2024/03/04
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精神科訪問看護と聞くと、よく分からないけどなんとなく不安な気持ちや怖さを感じる方も多いのではないでしょうか?僕も病院実習で見た閉鎖病棟の印象が強くて、初めて精神科訪問看護の利用者に同行訪問させてもらうときに利用者宅のドアの前ですごく緊張した記憶があります。今では精神科に対して奥が深くて面白いなと感じています。今回は、精神科訪問看護の実際についてイメージできるように説明したいと思います。

対象

統合失調症、双極性障害、不安障害、適応障害、アルコール依存、薬物依存、知的障害、発達障害など、精神疾患全般

よくある依頼内容

病院・クリニックのMSWや保健師から、時には本人・家族から直接ステーションに依頼が来ることがあります。介入するには通常の訪問看護と同じく主治医による精神科訪問看護の指示書が必要となります。

依頼内容としては、「生活リズムがついておらず身の回りのことがうまくできない」、「薬が適切に飲めておらず精神症状により生活に支障がある」、「寂しさや不安な気持ちが強く生活に支障をきたしている」、「人間関係の構築が苦手で閉じこもりがちになっている」、といったもの多いです。

「精神科=怖い」というイメージを持っていることもあると思います。しかし、上記のように精神疾患があることで日常生活に少し支障をきたしているケースが大半で、症状悪化して自傷・他害リスク高くなるケースはごく少ないです。また、そのようなリスクのある場合には複数名で訪問対応することや多職種と協同して入院につなげていくことで、看護師が訪問時に危険を感じるような場面はほとんどないのでご安心ください。

介入の方向性

点滴をしたり、褥瘡ケアをしたり、排痰ケアをしたりと医療的処置が明確で成果も分かりやすい身体ケアの訪問看護と違って、精神疾患を持つ人であることを除けば身体的には特に問題なく、成果が見えにくいため訪問看護が入る方向性・必要性に迷うことがあると思います。

精神科訪問看護は、利用者の病状に応じて健康状態の悪化防止や、リカバリー(回復)に向けて援助することで、利用者が体調面や生活面などのセルフケア活動を主体的に行えるようになることが目的の一つとなります。訪問看護師の理想や価値判断が優先するのではなく、利用者が求める生活が営めるように援助していくことが大切です。そして、たとえ訪問看護が介入してもすぐに利用者に変化がみられるわけではなく、回復したと思ったらまた戻ることや、3歩進んで2歩下がる、時には5歩下がる時もある。そんなことを繰り返して半年、1年、もっと時間がかかることもあります。看護師としては気負わず、利用者のペースに合わせて「待つ」気持ちを持つことも大切です。また、訪問看護師が自らすべてに対応しようとするのではなく、地域の社会福祉資源を活用して多職種を巻き込んで利用者を支えることが大切です。

ストレングスモデル

ストレングスモデルは、その人の「肯定的な部分や健康的な面」(ストレングス=強み)を活用して、生活のしづらさを改善し、希望をかなえていくことを目指す支援方法となります。病院では患者の問題点に着目する「問題解決モデル」で基本的には看護展開するため、その思考パターンに看護師は慣れていますが、精神科訪問看護で重要なのは、できること、強みを活かす視点を持つことです。利用者が地域の中でどのように暮らしたいのか、その目標のために活かせる強みは何だろうか?という視点で関わることで問題解決モデルとは違った利用者の側面に気づくことができます。趣味、仕事、資格、得意技、あるいは家族、友人、地域の社会資源などもストレングスのヒントがあります。ストレングスに含まれるのは、特性、技能、才能、能力、環境、関心、願望、希望の8つとされており、言語的・非言語的コミュニケーションを通じて情報を得ながら、利用者とともにストレングスを見つけ出していきましょう。

以上となります、精神科訪問看護を経験する中でストレングスモデルと出会い、問題解決型モデルとストレングスモデルを併用しながら介入することで看護展開の幅が広がり、利用者・家族との信頼関係も今まで以上に築きやすくなった印象があります。精神科訪問看護の何より大事なのは利用者との信頼関係です。気負わず、変化を待つ、そして、ストレングスを見つける、是非そのスタンスで関わってみてください。

▼執筆者プロフィール

藤井 達也
地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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